21話 海賊船11
コウはとっさに身をひるがえす。そして硬くガードを張る。
その様子を見て、ユーリックは微笑んだ。
「そんな恐がるなよ、大丈夫だって」
「大丈夫なもんかっ!」
「……カイルはまだ声変わりしてないのか?」
「……!」
二人っきりになって、ようやく声を出したコウ。けれど、冷静に聞いてみると、男にしては声が高い。
まだ少年だからと思っていたが……
「しっ知るか! 俺はこんな事絶対に嫌だ!」
そう叫んでベットから這い出し、そのまま部屋を出て行った。コウの心臓はバクバクだ。
今のはバレなかったのだろうか。……だといいが。
廊下を悶々としながら歩いていると、不意に呼び止められた。振り返ると、商人らしき人が手招きしていた。
「いたいたカイル、君はこっちの部屋使っていいよ」
「え……でも俺は……」
「またユーリックに買われたんだろ? あいつも可哀相なやつだよな。母親にさ……」
「? 何の事だ?」
「ああ……いや、何でもないさ。もう日も暮れる、早く部屋に戻れよ」
親切な人だ。ユーリックとは大違いだ。
それにしても、母親にって、ユーリックに何があったんだろう。
「どうしよう。どんどん離れてく……」
あてがわれた部屋に入り、ソファに座り込む。もう泣きそうだ。このまま会えなかったらどうしよう。
彼から離れたまま生きていける? そんな事考えた事もなかった。いつも当たり前のように姿を現すから。早く会いたいと勝手に心が急く。
++++++++++
一人部屋に残されたユーリックは、今日の獲物に逃げられ、少し寂しそうな顔をしていた。
髪をぐしゃぐしゃっと掻き毟り、上服を脱いでベットに横たわる。
「あいつ……いや、まさか、な……」
女という生き物は、皆同じだ。卑しくて、汚くて、醜くて。美しく飾り立てたその顔の裏で、何考えてるか判ったもんじゃない。
いつだって自分のため、金のため。男になんか、金か体しか興味がない。そういう生き物なんだ。
カイルは違う。純粋で、真っ直ぐな子。少年はまだ世間に揉まれてなくて、綺麗だ。だからカイルは違う。
「雌」であるはずない。
そう……思いたい……。
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