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21話 海賊船09


 真っ青なコウを案じて、ユーリックが自分の船に戻ろうと言ってきた。
 そうか、売られたんだった。今の俺(私)はこの男のもの。そんなのは絶対いや。
 だけど、今は逆らえない……。それに海賊船よりは商船の方がまだましだ。
 コウはユーリックに誘導され、甲板に出る。この船の横に、いつのまにか知らない船が付けてあった。

 結構豪華そうで、商船と言うものを初めて見たコウは、少しはしゃいでいた。

「カイル、これが俺の船だ、行くぞ」

「あっああ……」

 コウは仕方なく彼の船に乗り換える。海賊達は変な目で見てきた。彼らは知っているのだろう。
 コウがこの商人に売られた、という事を。

「ユーリック、またよろしくな」

「ああ、連絡をまっているぞ、船長」

 コウはユーリックの船に乗った。海賊船とは全然違う。綺麗だし、野郎くさくないし。

 やがて海賊船は遠ざかる。
 カルロやフレアンさんは……きっと探してる。ものすごく探してる(と思う)。

 ルーンも一緒に売られたのは不幸中の幸いか。

 そっとユーリックの手に持つ檻を見る。ルーンは険しい表情で商人を見ている。いつでも暴れておかしくない。

「ユーリック、俺はここで何をすればいい」

「決まってるだろう、俺の相手だ」

 そんなにはっきり言われると「そっか」って流しそうになるけど、俺は(今は)男で、あんたも立派なお・と・こ! まともに見えたのは最初だけだ。顔も結構好みだったし、いいヤツそうだったのに。
 フタをめくれば男好きて、つくづく運がないと思う。



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あきゅろす。
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