21話 海賊船08
……さて、ジャトー海賊を撃退し、皆一息ついたところで。俺……(私)何をやってるんでしょう?
船長とユーリックに挟まれ、二人はお互いに納得の顔。
私は早くルーンを取り返して港に帰りたいのよ……この二人は何がしたいの!?
「交渉成立、精霊と少年は確かに買い取らせてもらった」
「おう、また珍しいのが入ったら連絡するぜぇ」
「売るって……何勝手に――!」
「うるせえぞ、新人に意見する権利なんかねぇんだよ」
船長が恐ろしい剣幕で私を抑える。だがこの話を聞いていたルーンが、ピクリと反応した。
「コウを買った」と聞いて、腹の底から怒りが込み上げてきたのだろう。
だが、コウが無言で制す。
たとえその檻が特殊なものだとしても、古の神の全てを抑えることは出来ない。
相当の体力と精神力を使うのは確かだが。ルーンは密かに溜め込んだ力を抑えた。
今この船の全員を殺しても、陸には戻れない。
何とかして町に帰る方法を見つけない限り、下手な真似は出来ない……。
「俺を買ってどうする気だ」
コウは一番の疑問をぶつける。
ユーリックは商人だと聞いた。そんな彼が、こんなひ弱そうな少年を買って、なんの役に立つというのか。
コウは実は、彼に一度会っているのだが。全く覚えていなかった。
このままだと絶対思い出せなかっただろう。ユーリックのこの一言がなければ。
「カイル君、君とても綺麗で純粋な目をしてるね」
そう言われ、過去の忌まわしい記憶が鮮明に蘇った。リノアの街に初めて来たとき、あの時道ですれ違った男性も、同じ事を言った。
もしかして……という予感がしてならない。そしてそれは見事に当たっており、このユーリックとかいう男、実はあの素敵な男色家だった。
何故こんなところにいるのだろうか。商人といえど普通ではないのだろう。悪夢を見た気がした。
そんな動揺を示すコウを見て、ユーリックは細く笑った。
「緊張しなくていいよ、優しくするから」
だ……だから何をだ!
と、心の中で激しくつっこみをいれた。
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