21話 海賊船01 何故こんな事になってしまったのか。それはきっと私の不注意の所為。けどさ……やっとフレアンさんと楽しい旅行が楽しめると思ってたのに。いきなり『海賊船潜入』はないでしょう……! 頭の中で、誰にでもなく文句を並べる。その時の顔は結構険しいものだったに違いない。すれ違う一般人に、少し距離をあけられた。 (女だもん…ヒドイ) ちょっと泣きそうになりながらも、海賊船に近づく。この時ものすごく幸運な事に、海賊団は丁度この町で新しい船員を補充したらしい。 新人さんが、きょろきょろと辺りを見回している。 (あの子に協力してもらおう) コウはその少年に近づく。突然声を掛けられてさすがに少年も驚いていたが、私が女だとは判らないらしい。 「君、この町の子?」 「えっ!? はい……本当は海賊なんていやなんですけど…僕、人数合わせに巻き込まれちゃって」 「(素晴らしい偶然だわ…)いいよ、俺が代わってあげる、君は早く逃げろ」 「そんなっ! 無関係な人間を巻き込めないよ!」 「君だってそうだろ? 俺はこの海賊船に用があるんだ、見つかる前にさっさと行って!」 そう声を張り上げると、少年は急いで駆けて行ってしまった。それを見届けた後、再び船に近寄る。すると、船員らしき男がこちらに向かって何か言っている。 「おいっ! そこのお前、新人だろ!? さっさと来ねぇか!」 「……はい!」 なるべく低い声で、元気よく返事をし、その男の元へ走る。荷物を渡され、倉庫へ運ぶように言われた。これ結構重い……。 コウは倉庫へ行き、荷物を降ろして一息つく。今は誰もこの倉庫にはいない。埃っぽくて、むせ返りそうだ。日差しは小さな窓からしか入らないので、昼間でも充分暗い。一通り探してみたが、ここにはルーンの姿はない。 「やはり、船員が持ってるか……」 出航は夕方5時。あと3時間だ。それまでにルーンを見つけて脱出しないと、大変なことになる。 私は倉庫から出て、さり気なく他の船員に探りをいれ、ルーンを探し始めた。 ←前へ|次へ→ [戻る] |