19話 出発02 「別にいいだろう……何をしたわけでもないんだし」 「そういう問題じゃないの! あなたに乙女心は分かんないわよ!」 「はぁ……」 相当ご立腹のコウ。今は何を言っても裏目に出そうだ。そう考え、それから先は一切何も言わなかった。 一連の騒動で起きてしまったルーン。彼女は夜行性なので、少し辛そうだった。 「もう少し寝てていいよ」と言い残し、コウは顔を洗いに部屋を出た。ルーンは言われた通り、二度寝した。 残されたフレアンは、少し不機嫌な様子で着替え始める。カルロはそれをじっと見ていた。ふとその視線に気付く。 「! カルディアロス…起きてたのか」 『あれだけ騒いでおいて、それはないでしょう』 ダイスもコウに付いて行ってしまったので、この天の間には彼ら二人だけだ(ルーンは無視)。この状況は前にもあった……。 「大体……普通は「きゃあ」とか「びっくりしたー」とかいう反応するだろ。なのに何だあれは……「ひゃぁぁ」って……俺は化け物か」 『さぁ……』 「……もうちょっと真面目に答えてくれ」 寝起きの悪いカルロは、朝は2割り増しでドライだ。それは何日も一緒に寝てるコウなら知っていて当然だが……昼間か夜にしか会っていないフレアンなら、カルロの態度に少し傷ついて当然だ。 「お前も行くんだよな……カルディアロス」 『当然でしょう、行かない理由がありません』 「そうか……」 『大人しいと暗すぎて姿が見えなくなるので止めて下さい』 「幽霊扱いはよしてくれ……」 カルロはフレアンにはよく突っかかる。別に嫌いなわけではない…好きということでもないんだが。 『それとも、何か気になる事でも?』 「ああ、ちょっとな……。カルディアロス、お前はこれから先ずっとコウの傍にいるんだろう?」 カルロは少し間をおいて、いつも通り迷い無く答える。 『ええ、言うまでもないですが……それが何か?』 「お前がどれほどの力を持っているのか、その際限を俺は知らない。だが、それは確実に人間界に影響をあたえる物だ。違うか?」 『……気付いているか。侮れませんね、帝国の闇騎士は…』 珍しく、カルロが褒め言葉を言う。それをフレアンが「褒め言葉」と受け取ったかは知らないが……。 「今までのようにはいかない。それはコウが精霊の王だから。彼女が前へ進もうとすればするほど、お前の存在も危うくなる」 『それはコウの所為ではありません』 「だが事が起こってしまえば傷つくのは彼女だ、コウは必ず自分を責める……」 軍人として、古の神として生きてきた彼らは、常に危険の中にあった。それを回避するための方法もよく知っている。 「コウが狙われれば、お前は迷わず力を使う……絶対にな」 『……私の力を封印する気ですか?』 フレアンはくすりと笑う。いや、この時はリセイに戻っていたのだろう。カルロも更に真剣な表情になる。 ←前へ|次へ→ [戻る] |