20話 港町リノア04 お父さん、か。そりゃ自分で言ったんだけどさ。冗談のつもりだったのに、「実際そんなもんだろ」って……じゃ、私娘ってこと? 悲しい……。 「……コウ」 「……ん」 「コウ、起きなさい……」 「ん――、いや」 「こら、調子にのるな」 フレアンさんは優しく静かに起こしてくれる。耳元でそんな声で囁かれたら、普通顔なんか見せれません。絶対赤くなってるから。 「……ぱぱ、おはようのちゅーは?」 「――――」 と、言ってみたが、忘れていた。彼にこの手の冗談は通用しないことを。本気で今、もの凄く頭をフル回転させて、返事の言葉を捜しているのだろう。そこへ、見かねたカルロが口を挟む。 『コウ、この男にそんな芸当が出来ると思いますか? 見なさい、すっかり固まってしまって』 「冗談だよー、すぐ本気にするんだから」 コウはサッと起き上がり、トイレに行くと言って部屋から出た。その間も固まって、一ミリも動かない青年。 『いつまで固まってるんですか。死にました?』 「いや、びっくりした……」 『はぁ……貴方が奥手で助かりました』 「何の事だ」 フレアンの問いに答える風もないカルロ。そのまま青年を無視して、外の様子を見ていた。 ←前へ|次へ→ [戻る] |