20話 港町リノア01 南大陸は左側が欠けた三日月の形をしている。大陸の中央少し上に自由都市ティレニア、その東側にフィナの町、西側には平原が広がる。その平原をまっすぐ西に向かうと大陸の玄関と称される港町に辿り着く。 町の入り口に差し掛かり、門番に声をかけられる。フレアンが何かを渡すと、簡単に入ることが出来た。ここの門はそうとう大きい。材料は鉄を用いているようだが、重々しい門とは打って変わって、中の様子は賑やかな明るい町だった。 「ここが、港町」 沢山の店が規則的に並ぶ。商店街と似ているが、規模は半端ない。百や二百は余裕で越えている。だがどの店も同じではなく、それぞれに個性が感じ取れる。 馬はここで置いていくらしい。元々借り物だったが……。 「ありがとう、元気でね」 馬に声をかけるコウを、不思議そうに見る馬借の人々。首の辺りを擦ってやると、すごく気持ちよさそうにした。思わず笑みがこぼれる。 「コウ、行くぞ」 「はーい」 フレアンに呼ばれ、傍に駆け寄る。カルロは今はもう飛んでいない。精霊がそこらへんを飛んでたら、誰でも驚くからだ。 「あれ……? あの子……」 町に入り、人が多くなると、コウは何かを発見した。フレアンがこちらを向く。 「何だ?」 「あれ、精霊だよね?」 コウは前方のおじさんを指差す。指した後、慌てて手を隠す。人を指しちゃいけませんものね。 「ああ……水の精霊だな」 「水……!? はじめて見た。綺麗……」 おじさんの傍にいるのは、水の精霊らしい。大きさはルーンくらいだが、色は澄んだ水色だ。ねずみのような形をしている。カルロがひょっこり現れて、話に参加する。 『ナンセンスですね』 「え? ねずみが? 可愛いよ」 『ではあの様な姿に変えましょうか?』 「えー、ネズミに嫌味言われたら余計腹立つかも」 でしょう? と言われ、でも可愛い、と言い張る。そうやってじゃれている内に、今日の宿が決まったらしい。フレアンが、少し離れた所で宿主と話していた。 コウは彼の元へ急ぐ… ←前へ|次へ→ [戻る] |