闇の輝星《11》
翌朝、昨夜の星空が予言していたかの様な晴天となった。道のあちこちに水溜りができており、透明な水面に蒼空が映っている。
大人たちの許可なくクロス城の離塔に泊まったアモンとマリアは、見つかると大変なのでこっそり裏口から出ることにした。
裏口は相変わらず美しい庭園が広がっていた。
「ここの庭を手入れしているのは誰なんだ?」
アモンは何気なく問う。すると驚くべき答えが返ってきた。
「……私だ」
そう言ったのは、勿論銀の少年、リセイだ。
「え! この庭全部リセイが!?」
「母上と共に手入れをしていたが、今は一人だからな。時間もないしなかなか大変なんだ」
「そりゃそうだよ。なんでそこまでして」
「私以外の人間はこの庭を気にも留めない。ここは唯一母上の痕跡が残る場所なのに」
そう語ったリセイは、この時ばかりは7つの子供の顔をしていた。幼くして母親をなくし、毎日寂しい思いをしている少年の……小さな悲鳴を聞いた。
「リセイ……また、来るよ」
「リセイさま、お元気で」
裏口で向かい合って立つ少年少女は、確かな約束を交わした。次に会うときが何時か、なんて決める必要は無い。時が来れば必ず会える。そう信じている。
アモンはマリアの手を引き、誰にも見つからないように小道へ入った。彼らの背中を見えなくなるまで見送っていたリセイだった。
++++++++++
「ただいま――父さん」
「アモン! マリア!」
玄関でうろうろしていた父を見つけ、アモンは元気よく挨拶をした。一方父は、無断で外泊などされてしまい、行き先は知っていたものの心配で心配で寝れなかったようだ。
「全く……城主に迷惑かけなかっただろうな?」
「大丈夫大丈夫、リセイにも会えたし」
「……お前は……“様”を付けろと何度言ったら判るんだ――!!」
「ぅわっ! そんなに怒らないでよ父さんっ」
アモンは額に汗をびっしりかきながら逃げ回った。毎度の事ながら、一番小さなマリアが呆れてため息を吐く。
「二人ともほんとうに仲良しね」と言って……――。
闇の輝星 前編[完]
(C)07/11/09
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