19話 出発01 昨日は12時を回っていた。自室に戻る時間もなく、私はあのまま宮殿で休んだ。けれど、寝る間際の記憶があまりない。うとうとして、フレアンさんと旅行に行けるって浮かれてて。 それからの記憶が曖昧だ。 「ん……」 思考が段々はっきりしてきた。いつ夢から醒めたのか……。外の鳥達が騒がしいので、もう朝なのだろう。 「……重……」 体に違和感がある。背中が何だか暖かい。カルロがくっついてんのかな……? そう思い、私はゆっくり体を起こした。その時虚ろな目に映ったものは…… 「ひっ ひゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」 まるで化け物を見たかのような叫び声が宮殿に響いた。朝食の支度をしていたダイスも、慌てて天の間へ向かった。 「何事ですか!? コウ様!!」 ダイスがやってきた時には既に、コウの鉄拳をくらった黒髪の青年が寝台から転がり落ちていた。 「なん、何でフレアンさんがっ! 私のベッドで寝てんのよーっ!!」 殴られた部分を擦りながら体を起こし、普段通り冷静に返す。 「何故って……昨日の夜君が俺を離さなかったから」 「うそ―――っ! 騙されない!」 ぶんぶんと首を横に振って、フレアンの言葉を拒否する。これには青年もお手上げだ。ダイスに助けを求める。 「コウ様、本当ですよ。昨日お休みになる時、どうしても彼の服を離さないものですから……」 「そ、そんな……最悪……」 これだけ聞いても記憶が無い自分が恐ろしい。両手を頬に当て、私はこの世の終りのような顔をした。その反応にフレアンはちょっと納得いかない様だが……。 次へ→ [戻る] |