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8話 再会02

 フェザールーンはコウをじっと見つめる。つい先ほどまで馬鹿どもに対する怒りで厳しい表情をしていたのに……今は、すっかり普通の少年の柔らかな表情に戻っていた。

 フェザールーンは祭壇でコウを見た時から何かに惹かれていた。それははっきりと言えない、曖昧な感情だが。フェザールーンの意思を決定するには充分なものだった。

『王よ、私はあなたの傍にいたいのです。あなたの傍で、あなたの生き様を見たいのです……』

「フェザールーン……」

『王、私のことは、 ルーン で結構です』

「そう? じゃあ、私もコウでいいわ」

『私……? いいわ……?』

 ルーンは首をかしげた。コウは女の名前ではないか? そもそもカイルと呼ばれていたではないか。どれが本当の名前なんだ? と。

 ルーンの心の葛藤に気付いたコウは、また苦い顔をして躊躇いがちに言った。二人のぎこちない様子にクリスもナティアをその場で待たせ、コウに近づいた。

「何だ、精霊にも判らないんだな」

『え……?』

「私は女だ」


『えぇえぇぇっ!?』

「いや、そんなに驚くことでは……」

「コウ様、普通は驚きます」

「あ、クリス。……そうかな?」
 すかさずクリスのツッコミが入った。あんまりルーンが驚くもんだから、私はおろおろしてしまう。ルーンはきっと、王は男だと思って疑っていなかったのだろう。それに、あれだけの剣術を見せられたのだ。強く、優しい、立派な王だと思ったに違いない。
 ルーンは頭の中を整理しだした模様。そう、よく考えてみれば、なぜ気付かなかったのか、と。 声は高い、男であるには余りに華奢で、睫毛は長く肌白で……何と言っても顔形が綺麗だ。麗人かと思っていたがそうじゃない。
 ただ純粋に、綺麗なんだ。

 ルーンはコウに見惚れてた。精霊にも一応性別というものはあるが、繁殖するためのものではない。その規定では、ルーンは女とされている。つまりルーンにとってコウは同性なのだが、こうも惹かれるものなのか……。

「ルーン、がっかりさせたかな」

『まさかっ!』

 ルーンは力いっぱい否定した。そして漸く整理がついたらしく、コウの方を向き直り真剣に応えた。

『私は、あなたに付いて行くと決めたのです。あなたが男でも女でも関係ありません』

「ルーン……」

 ルーンはコウの傍に寄る。そのままの姿では大きすぎるので今は抽象的な姿をとっていた。コウはそっと両手を差し出し、ルーンを抱きしめる。
 その温もりに……ルーンは何百年も待ち焦がれた思いで一杯だった。



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