7話 戦い13 「さて、久しぶりだな。クリス・リーチェル」 ルクードの護衛の一人、武士の格好をした長身の男が声を放つ。知ったような口ぶりをする相手に、クリスは昔を思い出した。 「……貴様は」 「俺を忘れたか? 動乱で俺の腕を切り捨てたお前が」 「いや、忘れるはずが無い……」 クリスは相当苦しそうな表情をしている。コウは心配になったが、視界を遮るように出てきた軽めの男に気を取られた。 「じゃあ俺はこっちの貧弱そうな剣士と遊びますか」 「……」 コウは無言で男を見る。その恐れることの無い目を見て、相手は機嫌が悪くなった。 「随分身の程知らずじゃ無いかぁ? お前」 「………」 「ああ、俺が恐くて一歩も動けないってヤツか! うけるぜぇ!」 軽い男は高らかに笑う。クリスはちらりとコウの方を見た。そして、軽い男と武士に向かって言い放つ。 「お前ら二人共私一人で十分だ! かかってこい、犬共!」 「何……?」 「……へぇぇー」 クリスの挑発に見事に乗った男二人は、同時にクリスを睨んだ。そして、コウの方を向いていた軽目の男は、クリスの方に視線を動かした。男二人は、互いに見あい、にやりと笑う。そして、一斉にクリスに向かっていった。 「死ねや! 姉ちゃんよぉ!」 「クリス・リーチェル! 覚悟!」 クリスは向かってくる男2人に対して構える。 確かにクリスは強い。 だがあくまで司祭。武器も鉄拳のみだ。 どう考えても、不利は目に見えている。それでもクリスは迎え撃とうとしている彼女は、コウを護りたい一心であった。 精霊の王であるコウを守るために。 「私って、つくづく役立たずなのね」 コウの呟きは誰にも聞こえることはなかった。信用されていない。大切に扱われるのは嫌ではないけれど、これではまるで私は子供だ。一対一の対戦すらさせてもらえないなんて…… 確かに私は強くない。それでも護りたいと思うのは私だって同じだ。 コウはぎゅっとセーレン・ハイルを握り締めた。 [戻る] |