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6話 古の精霊12


「お前、東国の人間か?」

 コウに考えられるのはそこまでだった。付け焼刃の勉強など、とっさのときには役に立たないものだ。だがコウの指摘は的中していたらしく、男はピクリと繭を動かした。そして、氷のような瞳をこちらに向け、冷ややかに笑った。

「さすがは帝国の護衛だ。だがまだまだ甘いな。正体を隠して姫を守っていたようだが、こんな所に護衛一人で来るとは」

「東国の人間が何故こんなところにいる」

「理由はお前と同じさ、姫に会いに来た」

「私に……?」

 ナティアが反応した。そして彼女の目にはこの怪しげな男が映っている。確かにこの男は顔も良くて、正装も板についてて、話し方も特徴があり、女であれば誰でも誘われてしまいそうな雰囲気を持つ男だった。

 だが、コウは例外だった。今は男装をしているからという事もあるが、コウは一々笑みを浮かべる男は嫌いだった。笑顔は一見その人を優しそうに見せるが、逆に本当はどういう人間なのか、どんなことを考えているのかを隠してしまう。
 だからコウは初めからこの男を信用していなかったし、聞く耳も持たなかった。

「さぁ、姫よ。私が東国へお連れしよう」

「え、でも……」

 彼女はコウを見た。そうだ、今は私がナティアの隠れ護衛ってことになってたんだ。ああもうややこしい! と頭を横に振る。兎に角今はどっちがアムリアでも関係ない。この男をどうにかしない事には。



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