6話 古の精霊08 ガサ―― 「! き……気のせい?」 『いえ、気のせいでは無いと思います』 「そんなにはっきり答えないでよ。何がいるの?」 『ええ、と……え?』 カルロは一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに音のした茂みの方へ飛んでいった。コウもゆっくりカルロに付いていく。 やがて茂みから、「きゃあっ」という高い声が聞こえてきた。その声は聞き覚えがあったのだが、思い出すより先にカルロが茂みから少女を引っ張り出してきた。その顔に、ほんのり見覚えがあった。 数日前、コウがまだ適正試験を受けていた時の事。偶然同級生のサラに会い、自分の能力について話していたら、突然私を「才能が無い」と切り捨てた少女だ。 あの時あまり良い印象を持たなかったコウは、少女の名前も聞かずに去ったのだが。 「あっ! よかったー、人がいたぁ……」 少女はコウを見て安堵し、その場にへたり込んだ。カルロは少女を放し、コウの元へ戻る。当然少女にカルロは見えておらず、分けの判らぬまま何かに引っ張られていたのだ。 「私、さっき何かに捕まれたの! この森って幽霊とかもいるみたいっ!」 「……そうか」 コウはカルロを見る。カルロは少しバツの悪そうにしている。そんなカルロにコウはクスッと笑った。 少女はコウを見て、何か思いついたかのように話し出す。 「貴方、ティレニアの戦士でしょう? その格好、立派な剣も持ってるし……相当強いんじゃない?」 「いや、別に……」 「やだ! すっごく綺麗な顔してるー! よく見せてよっ」 「っ……やめっ……!」 「あら、照れてるのね? かぁわいいー」 [戻る] |