仲間11
薄暗い密室の中、私と五匹の獣は相対する。彼らは息を荒くしながらこちらを激しく睨みつけていた。
これを幻影などと呼んでいいものだろうか?
今からその確信を得る為に、私はきっと馬鹿だと言われる様なことをする。
獣達が一斉に走り出したと同時に、私はセーレン・ハイルをゆっくりと抜き静かに構えた。
まずは一匹、続いて二匹同時、残りの二匹は左右に散ったので、最後に背後から来るのだろう。
私はいつの間にか、相手の動きを読める様になっていた。何故なら、戦いに集中せずともセーレン・ハイルが戦ってくれるからだ。
だから自分と相手の動きに意識を向けられるし、それだけ戦況を見据えられる。
「最初の一匹は……」
寅と牛を合わせた様な灰黒の獣が目の前に現れ、勢いよく鋭い爪を振りかぶった。
私は右手で剣を持ち、左の拳を握り締めた。
少しの躊躇い。それを越える興味心。
どくんと鳴る鼓動に耳を傾けながら、前を見据えて獣に殺気を送った。
「グァァァァッ!」
鈍光る大爪は空気を切り裂きピュウと鋭音を鳴らした。
セーレン・ハイルの剣先と交じり合うと派手な金属音が響き、カチカチと僅かに震える音がした。
強靭な肉体により繰り出された獣の一撃は私の力では受け止めきれず、徐々に間隔は狭まってゆく。
この恐怖心を頭のどこかで好奇心に変えている自分がいて、それが嘲笑するほど可笑しかった。
獣はもう片方の大爪を立て、連続して振り下ろした。隙だらけになった私の左側を目掛けて。
「──っ!」
左腕に走る激しい痛みに耐えられず、微かに呻き声が漏れた。
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