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第2話:05


「!!!!」

 鈍い音と共に、獣の悲鳴が響いた。涙ぐんだ目では何もわからない。だけど感覚だけはハッキリと感じ取れた。何かがそぎ落とされたような感触……。

 仲間の血に酔ったのか、獣たちはさらに雄叫びを挙げている。そして……

 ――そこからは、どうやったかははっきりと覚えていない。ただ必死で…剣を振りかざしていった。体が自分のものじゃないような感じがした。

 たぶんセーレン・ハイルの所為だろう。彼が、私の手や足を支配しているのだ。だからこんなにも、信じられないほど剣を上手く扱える。

 やがて私の手の動きが止まった。初めに襲ってきた数十匹の獣たちは皆、青い血を流して倒れている。

「っは……はぁっ…はぁっ…」

 急な動きに体がついていかない様だ。明日は確実に筋肉痛に悩まされるのだろう……。
 様子を見ていた他の獣たちは……少し怯えているようだった。

 それもそうだ。それが普通だ。おかしいのは私。

 こんな大惨事……ありえない。それなのに、この妙な達成感は何だろう?わたし……

「生きてる…」

 靴がジャリっと鳴った。即座に他の獣も反応して、震えながらも向かってくる。少しだけ、敵の速さや攻撃の仕方を感覚で理解していた。

 ――来る!

 そう思って剣を振ろうとしたとき、セーレン・ハイルもまた私の手を操ろうとしていた。しかしその必要はないと判断した彼は、今度は風をさらに集めはじめた。

「セーレン・ハイル、今のは…タイミングは合ってたって事よね…?」

 彼は応えてくれた。そして……
 記憶にはここまでしか残っていなかった。



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