25話 空模様
ここは船長室。
フレアンさん父親疑惑が発覚し、泥沼のどん底まで落とされた気分の私は、工具をしまいに行くため倉庫の鍵を取りに来たのだ。
そこにはユーリックがいて、話してると少し落ち着くので、しばらく彼と居ることにした。本当は部屋に帰りたくないだけなんだけどね…。
25話 空模様
「へぇ〜、いっぱい面白いのがあるね」
今朝方船長室へ来た時もじっくり見てみたが、何が何やら全く解らなかった。改めてユーリックに説明してもらい、世の中には便利なものがあるもんだ、と感心していた。
ユーリックは少し得意になってガラクタを自慢する。それを横流しにしながら見物していると、古臭そうなペンダントを見つけた。
「ユーリック、これなに?」
「あ? あー、それはあれだ、霊縛用だ」
「霊縛……?」
どこかで聞いた言葉だ。思い出していると、先に彼が説明を加えた。
「ジャトーの船長が使ってただろう? 精霊の一切の力を無効にする優れものだ」
「ああ、思い出したわ、シドとか言う危険人物ね。精霊の力を無効にするなんて、そんな事出来るんだね」
「まぁなぁ。そうとう特殊だがな。ほら、お前の風の精霊を閉じ込めてた檻、あれと一緒だ」
そういえば、古の神であるルーンさえ、精霊の力を奪われて一般人にも見える体になっていた。まぁ結局は古の力に耐え切れずに檻が崩壊してしまったけれど。
コウが珍しそうに見ていると、ユーリックが近寄ってきた。
「それはもうだいぶ古いから、こっちのをやるよ」
そう言って差し出されたものは、綺麗な薄蒼の数珠だった。今まで彼の腕に巻かれていたらしい。
言われている意味がわからず、ただ突っ立っていると、腕を掴まれてその数珠を手のひらに乗せてきた。
「え、でも……ユーリックのでしょ?」
「俺はいいんだよ、まだあるから」
こんなのが何個もあるの!? と、そこじゃないだろうと言われそうな質問をしてしまったコウ。もう引っ込みもつかない。
ユーリックは小さくため息を吐いた。
「俺を誰だと思ってる。こういう宝物を集めるのが趣味でもあるんだ。別に深く気にするな」
「そっか、ありがとう……」
くれるというなら貰っておこう。コウは切り替えが早かった。
すると彼は少し嬉しそうに笑った。
「でも、海賊までこんなの持ってたらこっちとしては厄介よ」
「そうだな。ガラージルスの船長もあの檻を持ってたが、一応知らんふりをしておいた。霊縛用なんて希少なもん、知ってる方が特殊だからなぁ」
「あ、ユーちゃんいけないんだー」
「……お前な」
無邪気にじゃれてくるコウに呆れた顔をするものの、内心では愛しさを感じていた。
やっぱり女は嫌いだ。
だけど、コウなら構わない。
コウが必死になって「男女で区別するな」と言ってくれた。
これがその事に対する、彼なりの精一杯の答えだった。
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