23話 海戦
23話 海戦
「もう朝……? あー、すっごく眠い」
当然睡眠不足で頭痛もする。
コウはまだ寝ている瞼をこすり無理矢理周囲を見ようとした。だがぼんやりしていてよく見えない。
窓一つ無い牢屋でも朝はまだ明るかった。自分の影が薄く出来るほどだ。
腰を伸ばして体を起こすと、骨が少し鳴った。
「今日が頑張り所だもの、しっかりしないと」
気の持ちようで体も十分反応する。握力もだいぶ戻ったし、昨日感じただるさも今はそう気にならない。
大丈夫だ、これなら動ける。
体に合わない大きな服を脱ぎ捨て、薄い肌着を来た。スリット付きワンピース、といった感じだ。
この格好が最も動きやすい。多少の恥ずかしさを捨てる必要はあるが。
頭が疼く。女と知れた以上、偽髪を被る必要もあるまい。私は器用に止め具を抜き、肩につく程度の髪を露わにした。
準備も整った所で、とりあえず立ち上がる。牢にはしっかりと鍵がかかっていて、武器なしでは開けれそうにない。
誰か来たときが抜け出せるチャンスだ。その絶好の機会を逃さないようにしなければ。
「ルーン、昨日からずっと返事がない」
何度も何度も語りかけたが、一昨日の様に鮮明な反応は得られなかった。姿も声も判らないし、そもそもルーンの生命力が希薄だ。決して大丈夫とは言えない状態なのだろう。
ルーンを囲っていたあの檻は、古の神でも壊せなかった。
もちろんルーンが全快だったら世話ない事だと思うが、それでもあの檻はかなり特殊と言えよう。
ユーリックが少し話していたが、あの檻は西大陸で手に入れたものらしい。よほどの技と力を持つ人間が造ったのだろう。
「ま、とりあえずはここを出て船長室へ行かなきゃね」
そう呟いた時だった。
ものすごい横揺れがコウを襲い、途端に足が崩れた。カクンと膝が折れて座り込む。瞬時に膝をついて体制を整える。
「何? 今の揺れ」
海の上とはいえ、巨船がこうも激しく揺れることは滅多にない。外は嵐というわけでもないだろう。私は静かに耳を澄ます。
すると、遠くの方で微かに人の叫び声がした。よくよく聞くと、言葉というより騒ぎ立てている感じだ。
歓喜の声ではないだろう。明らかに違う。
「襲われてる……の?」
奇襲をくらったかのような騒ぎようだった。商船が攻撃を受けるということは無いと思うが。
だが人々の叫び声はだんだん鮮明に聞こえ始め、船室に何者かが押しかけ、子供の泣き叫ぶ声までしだした。
足音などからそれらの背景を予想し、異常な事が起こっていると確信したとき、突如牢の奥で扉が開いた。
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