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20話 港町リノア


「コウ、そろそろ行こう。船に乗る前に必要なものは揃えなくてはならないからな」

 青年はマイペースなコウに呼びかける。
 コウは返事をし、セーレンハイルを手に取った。それに長めの布を被せて腰に挿す。
 小さな体を隠す様に白いマントを羽織った。その端を胸の辺りでまとめ、止め具を付けて整える。

「ルーン、入って」

 小鳥はスッと籠に入る。

 フレアンは二人分の荷物を持ち、部屋を出た。

「うわあ! すごい人っ」

 街は朝日を浴びてより一層活気に満ちていた。
 様々な店に目移りしながら歩いている私に、フレアンは歩幅を気にしているらしく、時々こちらを振り返った。
 その彼の優しさが嬉しくなる。

「何を笑ってる」

「えー、別に?」

 照れくさそうに顔をそむける彼。ああ、幸せ。こんな旅がこれからしばらく続くなんて。

「でかしたヘルトさん!」

「何を叫んでいるんだ? 俺は船券を換えてくるから、この辺で待っててくれ」

「あ! うん! でも、一人で行くの?」

「ああ、何か問題があるか?」

 彼はいつも一人で先先行動する。
 そういう所は尊敬するが、寂しいと思ったのも事実だ。
 もう少し周りを頼ったらいのにと思いながら、自分が情けないからだと勝手に結論付けてみた。

「フレアンさん、大丈夫! 私ルーンとここで待ってるから、カルロ連れて行っていいよ」

 案の定、彼は意味の分からない顔をした。

「……何の事だ?」

『そうですよ、コウ。何で私がこの男と一緒に』

「駄目! フレアンさん一人じゃ寂しいでしょ? 一緒に行ってきなさい!」

 コウは何を原動力にしているのか自分でも判らない程のパワーが出た。
 その勢いに気圧されてカルロも言葉に詰まっている。フレアンは、コウの言いたい事はよく判らなかったが、彼女がそこまで言うのには何か訳があるのだろうと考えた。

「まぁすぐそこだからな。カルディアロス」

『はぁ、判りましたよ』

 カルロはちょっと嫌そうに青年に近寄る。それを確認し、フレアンは交換場へと向かった。

 コウは暫く二人の後姿を見守っていた。

「うん、やっぱり一人になっちゃ駄目だよね。フレアンさんだって誰かといる方が楽しいと思うし」

 などど、呑気に思っているコウだが、実際は小規模な毒舌大会になっていた。

 それでも、余計なお世話でもいい。
 人との接触を拒む彼に少しでも触れ合う幸せを感じてもらえたら、それで。



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あきゅろす。
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