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19話 旅の始めに


 コウは馬に乗ったことも、触ったことすら無い。乗り方が全く分からないのだ。

「じっとしていても乗れないぞ」

「……わ、わかってるけど何から手をつけていいか」

 フレアンは大きくため息を吐いて近寄った。
 コウの世間知らずは今に始まったことではないが、それでも軍事機関の生徒が乗馬も出来ないなど理解に苦しむのだろう。

「ほら」

 コウは差し出された手を遠慮がちに取った。

「しっかりつかまって、足はそこに掛けて」

 彼の言う通りにすると、驚くほど簡単に馬の背に乗れてしまった。

「振り落とされるなよ。大人しい馬だから大丈夫だとは思うが」

「やだこれ楽しい! 心配ないよ、さあ港町に行こー!」

 馬の乗り心地が良かったので、少し気分がいい。自然と心が躍ってしまう。

 その気分の変わり様に少し驚いた青年だったが、いつもの清ました顔をして彼も馬に乗った。
 彼はコウと違って滑らかな仕草で馬を跨ぎ、愛でている。

 暫く馬を歩かせていたが、本当に大人しい馬だった。
 もっと勢いよく走ったりするのかと思ったが、その気配は全く無い。
 コウとフレアン、彼の横にリードで繋がれた荷物運び用ので、馬は合わせて3頭だ。

 馬に乗るのもやっとだったのでルーンの籠は荷物用の馬に乗せておいた。

 カルロも一緒に馬の背に座っている。それを馬は何にも気にしてない。精霊は動物と相性がいいのだろうか。

 コウたちは道なりに港町リノアを目指した。






 19話「旅の始めに」[完]



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あきゅろす。
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