19話 旅の始めに
遠くの方で、人一人と馬何頭かがこちらに向かっていた。コウも駆け足で近寄る。
「これが馬!? おっきい!」
「移動用はスタミナ重視だからな、体も大きめなんだ」
『コウ、こちらにルーンと荷物を括り付けてください』
「ルーンを荷物扱いしないでよ!」
コウはカルロに荷物だけ渡した。ちっ、と聞こえたような気がしたが、気にしない気にしない。カルロは何をそんなにぴりぴりしてるんだろう。
「カルディアロス、ルーンにコウを取られたからって拗ねるなよ」
『意味が判りません、寝ぼけてるんですか?』
「カルロ……そうだったの」
そう言われてみると、ずっとルーンの籠を持っているからカルロを抱きしめてなかった。
抱きしめるのは日常茶飯事だが、それを拗ねているカルロが可愛いく感じた。
『コウ、余計な事は考えないでいいですから』
カルロが言い終わる前に、コウは狸を抱きしめた。その行動に一番驚いたのは抱かれた本人だろう。
「可愛いやつめ〜! ぐりぐりしてやるっ」
『ちょっ何やってるん……コウ!』
本格的に怒り出したので、この辺で止めておいた。開放され、カルロは息切れしている。
そんなに強く絞めてないが。
『全く、滅茶苦茶です、貴方は』
「あはははは」
にこにこと嬉しそうに笑うコウを見て、それ以上怒れなかったらしい。カルロは顔を反らし、馬の方へ飛んでいった。
「コウ、おいで、一人じゃ馬に乗れないだろう」
フレアンが手招きするので、そちらに向かった。
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