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19話 旅の始めに


 コウはフレアンと共に裏門へ向かった。
 角を曲がれば裏門に出る、という所でダイスに出くわし、首を傾げた。

「ダイスさん、裏門にって言いましたよね。どうかしました?」

「コウ様、申し訳ありません。門の辺りで誰かがこちらの様子を伺っているようでして」

 ダイスは聊か困っていた。
 周囲の異変を察知したのか、フレアンは一人で角の端に体を沿い、そっと裏門の辺りを覗き見た。
 確かに誰か居る様だが、とりわけ危険なものではない。

「顔ははっきりとしないが、大した問題じゃない。だが裏門を通るのは止めておいた方が無難だろうな」

「左様でございますか」

 他の出口はいくつかありますがとダイスが言う間に、フレアンの中で通過路は決まったらしい。

「いや、構わない。適当に表へ出るとしよう」

「はい。ではコウ様、長旅お気をつけくださいね」

「はい、行ってきます!」

 荷物を片手に大きく手を振り、コウは明るく旅立った。
 その姿が何とも言えず、この底から込み上げる不安を吹き飛ばして欲しいと願わずにはいられなかった。

「コウ様を頼みます、リセイ様」

 ダイスは深く頭を下げた。
 誰も居ない宮殿の表廊下で、ダイスはただ一人礼を尽くし続けた。

 外の世界はやはり危険と隣り合わせである。それを十分承知しているフレアン、もといリセイ=オルレアンなら大切な王女を任せられると自分に言い聞かせる。

「ヘルト様の御所まで、どうか無事で……」

 口から零れた言葉は地に落ちた。
 不安は拭えない。
 けれど避けては通れぬ道だった。

「ダイス様? かような所で何をなさっているのです?」

 宮殿の庭掃除の女中が声を掛けた。
 漸くダイスは頭を上げ、不思議そうに目を丸くする侍女に「何でもありませんよ」と笑顔を向けた。



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あきゅろす。
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