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19話 旅の始めに


何があったのか二人に詰め寄っていると、天の間に白髪の男ダイスが入ってきた。

「コウ様、支度が整いましたら裏門へお越しください」

白髪を丁寧にまとめている彼はリュートニア家の家令だ。どうやら彼が出発の準備を進めていてくれたらしい。
コウは明るく返事を返し、急いで着替えを始めた。

『コウは最近つい立ての向こうで着替えるんです。前は私の前でも堂々と脱いでいたのに』

カルロが何かほざき始めたので、その口を塞ぐ為に近くにあった置物を投げた。それは見事に的中し、カルロの頭には小さなたんこぶが出来てしまった。
カルロは懲りていないのか、頭を擦りながらまたフレアンに言う。

『こうやって日に日に凶暴になるんです。貴方も気をつけた方がいい』

「お前が怒らすからだろう」

忠告されたものの、今のは明らかにカルロが悪いとしか言い様がない。しかし「カルロの前で脱いでいた」という事態にはフレアンも少々腹が立った。

「あの時はカルロが動物だって思ってたからなのよ。別に変な意味じゃなくて……」

着替えを終え、コウはつい立てから姿を出した。カルロに文句を言おうと思ったのだが、自分の発言に「しまった」という顔をする。

「動物でなければ何だというんだ?」

僅かな失言をフレアンは決して聞き逃さなかった。直接目を向けなくてもカルロが睨んでいるのが分かる。

「な、んでもないです」

「そんな訳ないだろう。コウは俺に嘘を吐けると思ってるのか?」

いいえ思ってません。でもカルロちゃんが恐いんです。お願いです、見逃してください。
と心の中でお願いしてみたが通じるはずも無く、更に責められた。

『コウを責めないで下さい。彼女は私に気を遣ってるだけなんですから』

「なら正直に言えよ、カルディアロス」

『本当は気付いてるんでしょう? いちいち言わせないで下さい』

「本人から聞かないと確信できない」

どことなく今日のフレアンは結構強気だ。今までずっと気になっていた事なのだろう。

出会ったのは何年も前だが、この緑狸について詳しい事は何も知らない。色々な情報や噂から少しずつ見えてきたカルロの本性。だが、これから共に長い旅をする仲間だ。本当の事を知っておかなくては動き難いのは確かだった。



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あきゅろす。
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