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18話 西国


 18話 西国ラナース


 王は国の象徴にして実権を握り、商業の国とも呼ばれたこの国は帝国と東国の両国と交流があった。

 宗教は様々で、思想の自由が認められていて、多宗教な国はまとめる時に多少の乱闘はありはするものの、国民が国民の意思で考え生活している為大きな内乱にはならなかった。

 ゲハール王はこの国を発展させた良き王ではあるが最近家臣達からの評判が堕ちていた。

 国民のための政治から諸外国のご機嫌とりの政治に変わってきていると、そう噂するものが後を絶えなかった。

 西大陸北東部に位置する王都ルタ。この中心部に本城がある。城の造りは優美な曲線を多用しており、金の装飾が目立った。

 入り口に扉はなく大きく開かれており、綺麗な色ガラスで描かれた神々の御姿を映す多くの窓。背の高い建物が多いようだ。

「エクサ様! エクサ王子様ー! どこにいらっしゃるんですか!?」

 城の比較的奥にある庭で、侍女が何やら叫んでいる。
 彼女は王子付きの使用人で、毎日どこかへ出かける王子に手を焼いている様だ。

「また……エクサ様、王都に出られたのかしら」

 エクサは国王の一人息子だ。当然この国の次期国王である。
 そんな人物が、こう毎日王都に繰り出していては危険も多いだろう。

「セーラ……バカ息子の世話は疲れるだろう?」

「いえいえそんな、王様の大切なご子息ですもの」

 セーラと呼ばれた侍女は、声の主の方へ振り返り、にこやかにそう答えた。
 声の主は、女性にしては少し声色が低く、かすれた感じが特徴的だ。
 肌の色も褐色で、不思議な魅力を持っている。

「エクサはじっとしてられない子だからね……まったく誰に似たのか」

「まぎれもなくミルト様の血を引いておりますね」

 ふぅむ、と言葉に詰まる女性。彼女は、ラナース国王妃ミルトであった。

 王妃でありながら、その剣の腕は軍隊長にも並ぶとされる。それでいて情に厚く、国民からも信頼されている良き王妃だった。



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