16話 騒動
===== 宮殿 天の間 =====
ダイスはコウに着替えを持っていった後、飲み物を取りに部屋を出た。今この天の間にいるのは、黒髪の青年と二人(二匹)の精霊。
そう、大変気まずい状況だった。
『それはカツラですか?』
「ああ、オーダーメイドだ」
『どうせならもっと派手目の色にしたらいいのに』
「影で動く人間が金髪はないだろう」
『大丈夫ですよ、貴方は普通にしてても暗いですから』
これらはカルロとフレアンの会話。フェザールーンはこの二人に関わりたくないので、こっそり隅に隠れていた。
「暗い、か。お前よりはマシだよ」
『……言いますね、友達居なくて泣いてた貴方が』
フレアンもさることながら、カルロもかなり口が悪い。本当の事はズバリと言うし、躊躇いがない。
この二人……コウの前では相当優しい物言いだが、実は毒舌。二重人格というべきか、こういう性格なんだ、と言ってしまえばそれで終わりだ。仲間は大切にするし、大事なものは命がけで守る。だが、そうでない者に対しての態度は絶対零度に近い。
そういう所が似ているからなのか、仲が良いのか悪いのかはっきりしない二人。コウ曰く、仲がいいらしい。
『貴方との会話はもう飽きました。早くコウ帰ってきませんかね』
「……お互い様だ」
普段面倒くさがって会話を好まないカルロが、嫌味であれ話をするのは珍しい事だ。そういう所から見れば確かに仲良しさんかもしれない。
こんな状態になっているとは知りもしないコウは、ダイスの用意した着替えに大慌てだった。何に慌てていたか?
それは……
「何このフリフリ! レースやらリボンやらで乙女チックもいいとこよ!?」
普段服装にはあまり興味がないコウ。背が高い上に、フリフリのロリロリは最悪だ。顔全体が青ざめていた。
「私には重過ぎる。適当なの着てこう」
そばにあった寝巻きのようなものに手を掛けた瞬間、掴んだ服を奪い取られた。そして華々しいメイド服を身にまとった若い女性数人が、どこからともなく出てきた。
「えっ? どこにいたんですか!? まさかずっとここに……」
コウの質問に答える様子など全くない。ただされるがままに着せ替えられた。
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