16話 騒動
私は恐かったのだろうか。この身を誰かに犯されるのが……足がすくむほど恐ろしく感じたのだろうか。
平気だと言うのは、嘘。一人では何も出来ない。私に出来る事は限られている。
それを、思い知らされた。
16話 騒動
午後11時00分。
「コウ様!? その服……どうされたのですか!?」
宮殿に入るなり、コウの帰りを待っていたダイスが大慌てで駆け寄ってきた。
確かにコウの胸元は阿呆共に破られて、下の服もよれよれになっている。
しかし意外にも本人が気にしていなかったので、ダイスはそれ以上騒ぎ立てる事なく宮殿内へと急かした。
当然の如く宮殿に入るフレアン。それを横目でみやる。
彼はコウの視線に気付き、やんわりとした笑顔で返してきた。
「(それは反則でしょう……)」
その笑顔にだけは逆らえない。
行き場のない感情を抑え、ため息を漏らす。
辿り着く先は当然『天の間』、カルロとルーンが帰りを待ちわびているだろう。
今日は食事会もあり、もしかしたら友達とおしゃべりでもしているのかも……と思って、コウの帰りが少し遅かったが、精霊たちは我慢していた。
この時期、世界各国から優秀な人間が集まる。もしも、ここに精霊の王が居ると知れれば、それは非常に危険なことだった。
ルーンやカルロはその強大な力を持つゆえ、制御するのも並大抵ではない。
ふとした時に、万が一彼らの存在に気付かれたなら、それこそ精霊の王に繋がってしまう。
この為、そう易々と出歩く事が出来ない。
このティレニアにアムリアが居る事は、帝国の極一部の人間と、リュートニア家の者しか知らないのだから。
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