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15話 後夜


 生きた心地がしないほど、恐怖に支配されたこの空間で……ただ一人、私だけが平然としていた。それは、彼の殺気の対象外であったからだろう。唯一、彼の恐怖から逃れていた。
 そんな私には気になる事が一つ。彼が剣を抜き、男を成敗したのはいいのだが……

(一度も私の事を見てない……)

 それがとても不安になって、この緊張の中、思わず呼んでしまった。

「フレアンさん……」

 瞬間、この場を支配していたフレアンの殺気が消滅した。ようやく恐怖から開放され、安堵する男共。
 ナティアは依然として震えて動けなかった。

「フレアンさん、私……」

 私が言いかけたその時、彼はその腕を差し出してきた。無抵抗のまま彼の胸に顔をうずめる。緊張よりも安心の方が先立った。
 抱きしめる強い腕に身を任せ、静かに目を瞑る。すると、自然と涙が溢れてきた……

 私は……恐かったんだな。
 そう思い知らされる瞬間だった。



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