15話 後夜
コウの反撃に立ち上がれない男。それを見て、怒りと不思議な恐怖を覚える残り5人の男達。コウは依然として笑みを浮かべる。
この男達にどんな制裁を加えてやろうかしら……と、そんなことを考えていた。
「お前……なん……何なんだよ!」
「何って……忘れた? 私もここの生徒よ、軍人訓練してるんだから、別に不思議じゃないでしょう」
「それはっ……そういう問題じゃねぇ! たったの一発で……」
たった一発の蹴りで気絶寸前の男のことを言っているのか? だがそれは当然のこと。コウの両足にはルーンによる風の守護がなされている。蹴り上げる早さも加速するし、威力も上がる。それが「古の神」の力なら尚更だ。
「今剣を持ってたら血祭りにしてたとこよ、よかったわね?」
「なっ……」
コウは動揺を見せる男共の前に立つ。奴らは誰一人として言葉を発しない。さっきまで弱っていた女が、急に自分より強者だと感じた。その状況の変化についていけない様だ。
コウは男共に冷ややかな視線を送る。突然、コウの真後ろに居た男がこの沈黙を破った。その勇気は褒めてあげよう。だが手篭めにされる気は、無い。
後ろから掴まれた腕を前に引き、男が体勢を崩したところですかさず肘で腹をえぐった。見事に決まったその衝撃で、男はその場にうずくまる。
「ぐぇ……」
「私に関わらないで、迷惑」
残り4人。このまま一人一人倒していけば、大丈夫。怯えた顔は絶対に見せない。そんなことをすれば、たちまちに奴らの餌食になってしまう。
「……調子にのるなよ?」
4人の男は、それぞれ刃物を取り出した。どこに隠してあったのか。気付かなかった。
刃物をちらつかせ、恐いだろう? と目で言ってくる。そんなものが恐い分けないだろう。ただ、少々厄介になった。刃物相手に素手で戦うのは危険。4人の男は徐々に近づいてくる。距離は段々近くなり、刃物も鮮明に目に映る。
多少の覚悟はしておかなくてはならないだろう。たとえ、この身が傷ついたとしても、自分を汚される事は死ぬ事より恐いから。
「おい、お前達、ここで何をやっている」
この時、遠くから投げ出された声に、私の思考が止まった――。
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