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15話 後夜


 食事会は次の赴任地が決まった軍人候補生達で溢れていた。
 リナの言う通り、二次試験を棄権した者も何処かの軍への入隊が決まっているらしい。
 またサラが言っていた事も嘘ではない。
 今回の試験で恐れを感じた者は正式な軍人になる事もなく、渡り戦士や雇われ警備兵などの職を持つ者が多かった。
 来年の試験を受ける数は、ごく僅かと思われる。

 コウは食事会に少し顔を出すと、すぐに一人宮殿へと向かった。
 まだまだこの機関内には多くの人間が滞在している。ルーンの事も考えると、一刻も早く戻って力を分けてあげなくてはならない。
 そう考えると、自然に足が速まる。


 === 宮殿 ===


「カルロ、ルーン、ただいまっ!」

 宴会で騒ぐ人々を掻い潜り、天の間へ辿り着いた私は、元気いっぱいに彼らを呼んだ。

『おかえりなさい、コウ嬢。上手くいったのですね』

「うん、二人のおかげだよ、ありがとー」

 小鳥のルーンが顔の高さで浮遊する。その下で、カルロが溜息を吐き、無事済んだ事への安堵の息を漏らした。

 ルーンは思っていたより元気だった。何でも、普段より少し体が重いくらいだと、本当に平気そうに話した。
 それはこの宮殿がいかに精巧に造られているかを物語っている。
 そう、何の為の宮殿なのか……考えれば切りが無いが、恐らく、直接精霊に関係のある事だろう。

「カルロ、闇族と戦えたよ。勝利とまではいかないけど、以前よりは戦いやすかったの。修練の成果かな」

 ほわっと笑った柔らかな表情がとても愛しく思った、カルロ。
 あえて内心を隠し、悪戯に返事をする。

『それはよかった。私の苦労の甲斐がありました。あんなに姿を変化させたのは初めてですから』

「それは悪かったって! でもカルロ綺麗なんだからいいじゃない」

『……理由になりません』

 カルロはそっぽを向いてしまった。
 機嫌を損ねてしまったと思っていたら、ルーンがそっと耳打ちしてきた。

『あいつ、照れてるんですよ。人型見られて』

「へー、照れたりするんだ、案外可愛いね」

 こそこそと噂していることは直ぐにバレて、カルロの一睨みが入る。……が、狸に睨まれても恐いはずがない。
 それどころか、少々可笑しい。
 思わず噴き出し、更にカルロはへそを曲げた。

「あ! そうだ、ダイスさんに知らせる事があったんですよ」

「はい? 私にですか?」

 無理矢理に話題を変えてみた。
 急に話を振られた方からすれば、若干迷惑なものだが。
 ダイスは何も気にせず、コウの「知らせ」を聞き返した。
 私は先日受け取った手紙を渡す。

「……これは! ヘルト様……そうですか、承知いたしました……」

 ダイスは後は何も言わず、部屋を出てった。残されたコウはどうしていいか判らない。
 ちらりと隣のカルロを見る。

『彼に任せておけば問題ないでしょう、あなたは心配する必要ありません』

「うん、そだね……」

 そのまま立ち尽くす事10分。再び天の間の扉が開いた。



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