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15話 後夜


「今回の本試験は見応えがあったな」

「そうですね……死族を倒したあの司祭2人は我が軍にお誘いしておきました」

 闇の中で二人の男が怪しげに姿を隠している。だが彼らは何をするでもなく、ただ今回の試験についての話をしていた。

 どうやら試験の2回戦に勝ったチームの人間は、皆この男達の属する軍へ入ったらしい。コウのチーム以外は、だが。

「最後のチームのシスターは?」

「帝国軍の手が早かったので……」

「まぁいい、司祭二人には闇の精霊と契約させておけ」

「はっ」

 男達の会話からして、二人が主従関係である事を思わせる。リナを迎え入れれなかった事を残念がっていた。


 15話 後夜


 午後8時00分。

 本試験の翌日、試験に合格したもの達の為のパーティーが行われていた。華々しい雰囲気で夜を飾る人々が機関内に溢れごった返した状態だ。パーティーといっても、祝いの食事会のようなものだ。

 先ほどの男2人は食事会に出席することなく、それらの影にいた。夜は冷えるこの季節、体に大きな布を被り、姿をなるべく隠すようにしている。用意していた馬を撫で、今から遠くへ行くかのような雰囲気だ。

「シスターは残念だったが、あの戦士はどうした? あれだけの好条件で我が軍に来ないという事はなかろう」

「それがあの戦士、帝国に志願すると強く言い張るもので。何か思い入れがあるのかもしれません」

 予想外の返答に主は興味を持つが、今はそれを追及している時間もない。従者は続ける。

「それと、剣士の事ですが……」

 その言葉に主の方は明らかな動揺を見せた。

「名はコウ・サン、珍しい女剣士で、契約精霊は未だ無し。ですが一次の結果は随分高い評価を得ていました」

「コウ……か」

「どうかしましたか?」

「いや、あの戦う姿……少し似ていたからな」

 周りが暗く、主の表情をよく見る事は出来なかったものの、従者は何かを感じ取った。そして普段は他人に積極的な興味を示さない主が、一人の剣士にかなりの興味を寄せている様子を見て、ふと思い出す。

「以前森で会った剣士ですね。帝国の衛兵かと思っていたら実はアムリアだったという……」

「ああ、あのカイルという男もこの試験に参加しているかとも思ったのだが……奴は精霊の王、こんな茶番に出せるものではないか」

「そうですね……帝国が絡んでいるとすれば尚更、そんな危険な事はさせないでしょう」

「まぁいい、また次の機会にゆっくり探すとしよう」

 納得した様子の主に、少々安堵する。また以前のように「会いに行く」などと言い出さなくてよかった、と。そんな従者の不安も他所に、主は思いついたままを話す。

「そういえば、軍人達の中で帝国聖軍軍総を見つけた。カイリ・エディン、いつ見ても隙の無い男よ」

「はい、ですが神軍の軍総とその守護共は見当たらないようでしたが」

「当然だろう。奴らは帝国の盾だ。そう何時も帝国を離れたりはせん。特に今の時期、この本試験の為にどの国も精鋭部隊を派遣していて、国の守りが薄くなっていて狙われやすいからな。今頃本国で警備を強化しているだろうよ。ま、それが判っているから誰もあの国を攻め込もうとは思わないんだがな」

「左様ですね……恐ろしい国です」

 ひとしきり話した後、傍に控える馬に乗る。出発の準備が整ったようで、男達はそのまま闇の中へと消えていった。


 主の髪は真紅。従者を連れて、極秘にこの試験の様子を見にきていた彼は、東の国へと向かう。


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あきゅろす。
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