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5:二次試験05 2回戦

「リナ、どう?」

「っはぁ……駄目です、全然力が……」

 リナの魔力の高さなら、使いこなせるはずだ。だが、彼女には「天の精霊」が見えていない。契約精霊は普通見れるものなのだが、彼女はまだ見習い。ただ祈るばかりで、精霊と会話をしたことはなかった。

(それが原因か……)

 コウはリナの後方で心配そうにしている美しい鳥を見つけた。戦いが始まった途端、上空から天使が降り立ったのかと思ったのだが、あれがどうやら「天の精霊」らしい。

(リナは気づいてないのね。あの子の存在に……)

 鳥はこちらへやって来た。コウは死族を相手にしながら天の精霊を見やる。

『お願いします、我らが王よ。力を貸してください』

「貸すって、どうすればいいの?」

 コウは剣を一振りし、死族を払いのける。

『あの子は……リナは私の存在に気付いていません。その為渡す力にも限界がある。でもあなたなら、私の力を奪えるのでしょう?』

「出来るけど、加減するから」


『……あの子を守る為でも死なせてはもらえないのですね』

「当然」

 くすくすっと笑う精霊。鳥なのに表情が判るのは不思議な感覚だった。

 彼女が言いたかったのは、自分の力の全てをリナに与えて欲しい、ということだろう。だがそんなことコウが許すはずがない。その強さと優しさに触れ、天の精霊も心強い想いだった。

『大丈夫です、きっかけさえ与えてあげれば、きっとリナなら……』

「そうね……分かったわ、やってみる」

 コウは周辺の死族を一通り払うと、すぐに天の精霊に集中した。瞳を閉じ相手の鼓動を知り、それに合わせていく。

(カルロ相手より楽、かな)

 全身に力が戻る感覚が襲ったので、目を開き手に力を入れる。両手に天の力が集結し、玉のように形作った。

『それを杖の魔法石へ!』

「あの水晶みたいな部分ね、わかったわ」

 急いでリナに向かって走り出す。

 ちょうど死族がリナに襲い掛かっていた所で、杖で身を庇ったリナは、その杖を反動で飛ばされた。

 コウは落ちた杖を拾うと、魔法石に天の力を込める。魔法石は薄青色はら赤色へと変わった。

「リナ!」

 ガキンッ!!

 左手に杖を持ったまま、再度攻撃を受けているリナの前に立ちはだかり、コウは死族の鎌による攻撃を片手で受ける。それとほぼ同時に、周りの死族が一斉にコウに襲い掛かってきた。

「コウっ!」

 時間は無い。
 咄嗟にコウは杖を投げた。
 リナがそれを受け取る。

「――っ!?」

 その瞬間、リナの持つ杖から眩い光線が放たれた。死族に囲まれていたコウは、その光に目を閉じてしまったが、気付いて開くと……

「あれ……?」

「お? いきなり消えたぞ?」

 ケインも相手をしていた死族が突然消えたので、驚く。リナは上手く理解できていないようだったが、どうやら「天の精霊」を見ることは出来たらしい。彼女の目はしっかりと天の精霊の方を向いている。コウはほっと胸を撫で下ろした。

 その頃監督室ではちょっとした騒ぎになっていた。

「何……あの量を……一瞬で!?」

「あのシスター、凄い魔力の持ち主だな」

 暇そうにしていた試験官も、試合に夢中になっている。その横で、試験の様子を黙って見ている男が一人。

 誰も近寄らせない程の威厳を持ったその男は、この場に不釣合いなほどの重装。左右にお付の者が控えていることから、身分は相当高いだろう。

 彼の視線の先にあるものは、いったい誰なのだろうか……。

 一瞬で消えた。嘘のような光景だった。本当に一瞬で死族を倒してしまうなんて。

 しばらく呆然としていたが、まだ終わっていない事に気付き、尚座り込んでいるリナの方へ向かう。

 コウはリナの前に立ち、手を差し伸べた。その手をとり、リナも立ち上がる。ケインがこちらに来て、「大丈夫か?」と心配そうに言ってきた。

「何とかね」

「ええ、皆様もご無事で……」

 一先ずは安堵する3人。周りの観客も胸を撫で下ろす。見ているだけでも心臓が止まりそうなほどなのに、本人達にとってどれ程の重圧になろうか。それは想像を遥かに越えていた。

「死族を倒したなんて、夢でも見てるみたいだぜ」

「そうね……リナが居なかったら今頃は……」

 考えるだけでも、ぞっとした。

「さて、次が最後の相手になるが……」

 ケインが言いかけた時、奥の檻が開く音がした。それは非常に重々しく、いつまでも耳に響く程大きな音だった。つまり、相当の巨体が中に入っているのだろう。

「とうとう来たわね……最終戦」



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