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一次試験15


「コウ、見事だ」

 そう言ったのは、先ほどまで監督室にいたレッドだった。その表情には、今までに見たことない程の穏やかさが見られた。見事だという言葉に対して、コウは少し反応に困る。

「いえ……幻影ですから」

 その返事を聞いて、レッドは小さく笑った。

「君なら……任せられるよ」

「?」

 レッドの発言の意味が判らず、私は首を傾げる。それを判っていて何も言わない先生を見て、意地の悪さを感じた。

 そこに現れたのは、黒髪の警備兵。彼はコウに背中を向ける形で前に出て、レッドとの間に立ちはだかった。

「試験監督が選手に直接会話することは禁止されているはずです」

「おや、これは済まなかった。忘れていたよ。コウの華麗な舞に見惚れて……な」

 レッドの冗談を呆れながら聞いていたが、目の前の青年−フレアンさん−は、そんな雰囲気ではない様だ。

 どことなく険悪なムードの二人……。

 選手と審査員が話してはならない事を知ったコウは、これに怒っているんだろうと思い、フレアンの背中の服を掴む。

「フレアンさん……ごめんなさい」

 落ち込み気味のコウの声を聞き、フレアンはこちらへ向き直る。

「……君が謝る必要は無い。行きなさい」

 フレアンはそう言い放ち、背中を静かに押した。コウは後ろ髪引かれる思いでその場を後にした。



 第4話「一次試験」[完]

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あきゅろす。
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