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一次試験13


 幻影ってこんなのなんだ。

 コウは初めて幻影を相手にした。しかし意外にも感触がない事に驚く。

 本当ならここで闇の幻影はコウの精神を吸い取り、現物と化してしまうのだが……今のコウは溢れる力をきちんと制御している。そのため、これらの幻影は幻影のままでいるのだった。

 コウの鮮やかな舞に、一同は言葉を無くす。今まで見たこともない技法に。そして獣を狩るには美しすぎる剣舞。

 はっとした審査員が、慌てて次の相手を選ぼうと立ち上がった。

「遊びは終わりだ」

 その時突如現れた、長身の男。審査員は一斉に目を向けた。

「レッドさん! あなたの担当はここではありませんが……」

 審査室を警備していた兵士が必死で外へ追い出そうとするが……有無を言わせず、レッドはコウの次の相手を選んだ。選ばれた獣を見て、審査員は驚きの声をあげる。

「な!? これは使用禁止の……」

「許可は取ってある、始めろ」

 レッドに凄まれ、試験官は仕方なく開始の合図を鳴らした。

 コウの前に現れた次の相手は……3mは余裕で越えている巨体の獣。リストの森で見た黒の獣みたいだった。

 だがやはり幻影のため、殺気などは弱く恐れる事はなかった。周りの傍観者は騒ついている。先ほどの大柄の戦士の相手ですら、もっと小さかったのに……と。

 ふと監督室を見上げると、男がにやりと笑いながらこちらを見下ろしている。

 あれは……レッド先生……?

 その男は見知った顔で、初試験の最初に相手になった先生だった。彼の笑みに不信感を抱いたコウだったが、今は目の前の巨体を倒すことだけを考えることにした。



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