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一次試験04


=== 4号館 自室 ===


 連日の疲れが癒えておらず、慣れた寝台に横たわる。そうすると心が少し落ち着いた。

 ふとロッカーにかけてあるカイルの服に目をやる。さすがに正規の試験でカイルという偽名を使うわけにはいかない。

 コウは起き上がり、来ていた簡易服を脱ぎ捨てた。髪を後ろにまとめて、首にかけてあるネックレスを正す。なるべく軽装にするため、露出高めのタイトワンピースに黒のレギンスを履き、激しく動いても心配ないようにした。

 そっと胸元に光るシルバーリングを握り締める。どこの誰かも知らない男の人だったが、銀の髪に真紅の瞳……一瞬で魅せられた。

 後から思い返しても少し胸が騒ぐ。だがそれは恋ではない。きっと美しいものへの憧れ……そう強く思い、今は一夜の夢は忘れようと、頭を横に振って気を引き締めなおした。

 女であることが、軍の中でどれほど不利に働くか。そんなことは簡単に想像がつく。マントを羽織り、なるべく華奢な体を見せないようにした。

 腰にはセーレン・ハイルを挿す。他には何もいらない……。

 装備を済ませたコウは、本館へ向かった。2階では司祭達が集まり、忙しそうに試験の運営をしている。

 その中で、一際目立つ司祭に気付く。その人は紅い髪を揺らしながら、他の司祭達の資料を見てチェックを入れている。この場の全権を任されている様にも見えた。

 その人はこちらに気付くと、慌てて仕事を中断させて走り寄ってきた。

「コウさ……コウ・サン。どうかしたのか?」

 今、コウ様って言おうとしたんだな。クリスさんっておっちょこちょいかも。

「いえ、試験の前にちょこっとお会いしたかっただけですから」

「そうか……調子はどうだ? うまくやれそうか?」

「はい、大丈夫だと思います……多分」

 ――まだ……迷いがあるって顔だな……。クリスはそう感じた。

「……しっかり励めよ」

 心配そうに声を掛けるクリスを見て、コウもまた元気良く返事をした。クリスも気にはなったが、コウを信じようと決めた。



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