第4話:01「一次試験」
貴方は約束してくれた。だから私は貴方を信じて、今日この日を乗り越えてみせる。
誰に困難な道でも、私は必ずやり遂げてみせるわ。
第4話 一次試験
試験はある大会の様なものだ。関係の無い軍人達や町の人たちも、見物人としてある程度中に入る事が出来る。一種の行事の様であった。
もっと静粛なものだと思っていたコウは、まだ早朝だというのに街の辺りが異様ににぎやかである事に驚く。カルロは毎年行われるこの試験を遠目で見ていたらしい。
機関内には明け方から人の出入りが激しく、だがそれは一般人ではなく機関の関係者であった。
それぞれ国旗や軍旗を掲げ、中央ホールに集まる。彼らはこの本試験の出場者を見定めに来たのだ。
出場者が規定を満たして合格したとき、軍の者の目に叶ったものは即入隊が許される。
たとえば二次を全てクリアできなかったとしても構わなかった。
そう、これは……見習い達にとっての腕の見せ場であり、また雇う側の者からすれば、優秀な人材を確保する重要な場でもあった。
「それじゃあダイスさん、行ってきますね」
にこりと笑顔で部屋を出るコウ。その表情には少し余裕が見られた。ここ数日の出来事から、こういう事に対して慣れてきている様だ。普通の見習いは緊張して朝食も喉に通らなかったり、お腹を壊したり……それは散々な目に合う者が多いのだが。
ここへ来て『王』として担がれ様々と乗り越えてきたコウには、さほど緊張感は生まれなかった。あるのはその先に待つフレアンとの約束。それを思えば、自然と心にゆとりが生まれた。
コウは長い廊下を抜け、裏門へと回る。しかしそこには一般客なんかが屯していて、とてもじゃないが出られない。
一般の人間は知らないのだ。ただ変な所に門があって、庭が綺麗だなあとか、そんな風にしか思わない。
あまつさえそこから機関に入れるとか勘違いしている人もいる。
誰もここが禁断の地だとは知らないのであった。
私は少々困っていたが、知った声で呼ばれたので、そちらを見やる。そこには以前少し話した事のある、庭掃除の女性。その人はコウがアムリアだとは知らないが、この宮殿の守り人であるダイスの客人だということは知っている為、協力してくれたようだ。
連れらた場所は、隠し通路とも思われる地下階段。初めて見るため、私はおおっ、と驚きの声をあげる。
どうやら女性は、昨日のうちからダイスに案内係りを頼まれていたらしい。
女性に礼を言うと、階段を降りて地下を道なりに歩いていった。
それを確認した女性は、周りに誰も居ない事を再度確認し、静かに扉を閉めた。
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