修行15
「なあなあ、明日の試験緊張するな!」
「だよな――まあたぶんいけるって」
比較的和やかな雰囲気の中、数人の男女が割って入ってきた。その中には聞き覚えのある声の主もいた。
「コウ、明日の試験はいけそう?」
そう明るく話しかけてきたのは、良く知る友人−サラ・レイドルート−。その脇にはサラのチームメンバーと思われる男女がこちらを警戒しながら見ていた。
それが普通で、試験前日には他のチームの偵察をするものだ。だがコウ達は周りを気にすることなく明日に備えていた。
「サラ、こいつら例の落ちこぼれじゃね?」
そう軽く言い放ったのは、全く見知らぬ男。その発言に単純なケインは怒りを露わにしたが、リナがそれを制した。その間にコウは静かに睨みを効かせていた。男が少し後ずさる……
「ちょっと、コウはそんなんじゃないわ! 口を慎みなさいよ」
「ああぁ? だってよぉ、あのデカ男もチビ女も去年の試験で落ちてるし、そこの女もつい最近まで適性検査なんか受けてたんだぜ!?」
男の発言を叱咤するサラだったが、一向に自重しないためこの場を去ることにした。
「ごめんねコウ、気を悪くしないで? あいつ馬鹿なの」(ひどい)
「判ってるよ、サラも明日の試験頑張ろうね」
サラは「ええ!」と元気に返事をし、周りの取り巻きを叱りながら去っていった。
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「たく、嫌な連中だぜ」
「いいじゃない、あんたは先輩なんだから堂々としてれば」
「そうですわ、それに試験に合格すれば見直してくれますわよ……きっと」
リナの笑顔に顔を赤らめるケイン。彼女も鈍いなあ……と思ってしまった。
それから何時間か作戦を立てた後、三人はそれぞれ分かれていった。だが三人とも部屋へは戻らず、リナは教会へ行き身を清め、ケインは練習場で斧を振り回していた。
勿論コウもこっそり裏門へ回り、庭掃除の女性に手招きされながら無事宮殿内に入った。
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