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修行14


 ケインはしばらく暴れ回っていたが、ふとした瞬間ピタリと止んだ。それに気付いたコウが、どうしたのかと尋ねようとした時、待ち人の声がした。

「皆さん、遅れて申し訳ありませんでした」

 廊下から慌てて駆けて来たのは、白いシスター服を来たリナ。いつもは両方に三つ編みをしているのに、今日は急いでいた為か髪を下ろしている。腰ほどまである長い髪がさらさらと風に揺れる。

 それを呆然と見つめている巨体に気付き、コウは彼の横腹を小突く。ケインはハッとし、小突かれた所を擦りながらリナを迎えた。

「もしかしてケインってばリナの事……」

 コウは面白いものでも見つけたかのようにニヤリと笑う。この瞬間にケインの背中に悪寒が走ったのは言うまでもない。

 三人は長椅子に腰掛け、明日の試験について語っていた。一次に関しては三人とも問題ないと分かりきっていたので、やはり難関となる二次試験について熟考していた。

「二次の相手は三種類だ。といっても、俺は1番目でアウトだったんだけどな」

 ケインは苦笑しながら話す。それにリナも同調した。恐らく彼女も最初の相手で終わったのだろう。

 例えば負ければどうなるのかと聞いてみた。

「……人にも依るな。俺は自分の身くらいは守れるけど、チームの司祭が全身複雑骨折だった」

「私も……戦士の方がとっさに庇ってくださったから無事でした」

 二人の答えを聞き、コウは納得した。そう、これはあくまで個人戦。いざとなれば他人のことなんか庇ってられる余裕は無い。リナが無事だったことの方が奇跡だ。

 ただ……リナの言葉に何故か顔を歪めたケインが気にはなったが。

「そうか……いざとなったら……うん、何とかするよ」

「あ? 女に守られるほど腐っちゃいねぇよ」

 不機嫌そうにケインが答える。そう言う事は判っていた。だから、表向きは冗談としておく。

「ばか、あんたじゃなくてリナよ」

「煩せえ……皆まとめて俺が守るって言ってんだ」

 その発言にはコウも予想外だった。驚いた顔が気に食わなかったのか、ケインは照れながら立ち上がり、意味不明の気合を入れ始めた。

 コウとリナはお互い見合い、クスクスと笑っていた。



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あきゅろす。
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