修行09
起き上がれるほど回復したコウは、テラスでお茶をしていた。丁寧に手入れされた庭を眺めながら、紅茶を飲む。甘いお菓子に他愛無いおしゃべり……。それだけでやすらぎを感じた。
「クリスさん、忙しいのに心配かけたみたいで……ごめんなさい」
「いえ、構いませんよ。仕事もひと段落した所ですから」
「そっか、よかった……来てくれてありがとう。こうやって話してるとなんか落ち着くから」
「そうですか。お役に立てて良かった。貴方が倒れたときは本当にびっくりしたんですから」
女の子同士のお話。ということで、テラスから追い出された男共。ダイスさんだけはお配びさんということで、中に入れたが。
コウの膝の上にはちょこんと座ったルーンがいる。お菓子を分けられ、精霊は物を食べないと知り、驚くコウ。それでもあまりにコウが美味しそうに食べるので、挑戦してみた。
――が、やはり味がよく判らないらしい。明るい笑い声が宮殿内に響いた。
「いいなぁ……俺もお茶会に参加したい」
頬杖ついた金髪の男はぶつくさと文句を言っている。追い出された男二人は隣の部屋で休んでいた。コウが眠っていた2日間、あまり休んでいなかったのだ。寝不足もあるが、長い緊張から開放され、全身の力が抜けた感じだった。
「しかし、あの子はよく倒れるねぇ」
「いつもいつも無理をしすぎるんだ」
フレアンは少し怒りをこめて呟いた。アモンはそれをなだめる様に笑う。
「まぁ、今回のことは避けては通れぬ道だったことだったし。カルディアロスも付いていたんだ、そう危険はないさ」
「カルディアロスか……。あいつはアムリアに近づかないと思っていたが……結局はこうなるんだな」
「そりゃまぁ、奴も精霊だし、やっぱり王の傍がいいんじゃねぇか?」
フレアンはそうだな、と相槌を打つ。
彼は子供の頃からカルロを知っている。それはカルロがコウに一度話したことがあった。またその時、アモンもカルロの存在を知っていた。
もう十数年も前のこと……。二人とも、カルロがある程度力を持った精霊だということは知っているが、人型になれることまでは知らない。
親しくしていた彼らにすら、カルロは話さなかった。
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