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修行07


 体の中が少し熱い。胸の奥が疼き、− 助けたい −そんな思いが具現化したようだった。

 コウを取り巻くその周辺の空気はとても澄んでいる。二つの鼓動が重なり、それが鮮明に感じ取れた。

 次第に光が弱まり、カルロは今起こった事を確認しようと目を開く。もう傷口の痛みなど無い。先ほどまではズクズクと疼いていた傷が……治っていた。

 しかも姿は元の動物。つまりコウはカルロの傷を治すために精神力を多量に与え傷を治すと同時に、尚且つ力を奪って元の姿に戻した、ということ。

 与えすぎず、奪いすぎず……理想の制御だった。

 カルロはそれを確認した後、ずっと自分の手を握ってくれている小さな手の主を見やった。

 真っ白な肌に、涙の伝った跡が残っていた。先ほどまでの恐怖が細い肩を震わせていて、それを不本意そうに苦笑う少女。

 だが、精霊にはわかる。その小さな少女の体全体から溢れる力……とても強く、暖かで、どこか懐かしさを感じてしまった。

「カルロ……出来た……出来たよ!」

『はい、完璧です。コウ』

『コウ嬢、よくやりましたね』

 二人の精霊はそう言って優しく微笑む。その言葉に心から嬉くなった。不可抗力的なものはあったにしろ、精霊の王の力を制御できたのだから。それが自分に出来ない事ではないと証明された。それだけでコウは本当に安堵したのだ。

 こて……

『コウ嬢!?』

 安心しきった余り体の力が一気に抜け、意識まで飛ばしてしまった。コウが後ろに倒れると同時にルーンが柔らかな風を送り、コウの体を支えた。カルロはほっと一息つき、心配するルーンに『眠っているだけだ』と言う。ルーンも安堵の息を漏らした。

 このまま月の間に放置しておく訳にもいかないので、ルーンはそのまま風でコウを持ち上げて天の間へと急ぐ。
 その間にカルロはダイスを呼びに向かった。



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あきゅろす。
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