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31-08 願う理由

「え? ああ……いえまぁ、雰囲気で」

 と、苦笑いながら答えるコウ。だが上手く誤魔化せた様だ。本当は雰囲気でも何でも相手の契約精霊の種までは分からないのだが。
 まさかシュリと話した、などと言える筈も無く、引きつり笑顔のままカルロの頭をぐりぐり撫でる。

「花の精霊は今王城にいる。ここは彼女にとっては住みにくいからな」

「そっか……確かにここ、砂埃が多いですよね」

「近くに砂漠があるからな。ここも以前はもう少し森が多かったんだが、この何年かで一気に砂漠化が進んだ」

 国の現状を語る王女はいつだって真剣だった。そんな彼女だから力になりたい、助けたいと思うのだ。私がここへ来たのは決して東国王の為では無いと、心中に強く刻んだ。

 東国といえば、以前出会った東国兵も古の精霊を探して無茶をしていたと思い出す。彼らは相当な力を持っていたし、もしかしたらローズ王女も知っているかもしれない。

「ねえローズ王女、ルクード……って人知ってる?」

「……それは私の弟だが?」

「弟? え? じゃあ……ルクードって東国の王子様!?」

 目を見開いて驚くコウに、ローズは首を傾げた。そしていつかの事を思い出し、助言を加える。

「そう言えば、以前リノアの森で会っているんだったな、貴女とルクードは」

「はい。会ったと言うか一戦交えたと言うか……」

 交えた所かルクードとその他護衛に怪我もさせた。それも結構重度の。
 いくら東国兵が悪さをしたとは言え、自分の弟を傷つけられて気を害さない人間がどこに居ようか。
 私は恐る恐るローズの顔を覗く。

「? どうした? そんな怯えて……」

「いえ……ローズ王女はどうお思いかと……」

 急にへっぴり腰なコウを不思議がる彼女は、とり合えず問いに答える。

「どうって……あの時は早まった事をしたと……コウが怒っても無理は無いな」

「え? 怒る? 私が?」

 自分を指差しながら呆けるコウは、この時ばかりは普通の少女に戻っていた。それに何故か安心させられたローズは胸を撫で下ろす。

「怒ってないのか?」

「私が怒るわけないじゃない。寧ろローズ王女の方が……」

「ん? 私か? まさか、怒るなんてとんでもない。ルクード共々をここへ呼び出して土下座させたいくらいだ」

 なんて事を平気で言うもんだから、私もすっかり重たい空気を取り去り冗談まじりになる。

「土下座って……ローズ恐いよ。でも全然やりそう」

「……それはどういう意味なのかしら」

 ローズの口調が王女言葉になる、という事は少し怒らせたのだろうか。だがそんな不安は全く意味の無いものだという事は、同時に分かっていた。

 歳は結構離れていると思う。だがとても話しやすかった。
 ローズの雰囲気がクリスに似ているからという事もあるが、彼女は王女なのに気取っていなくて、意外に物知りで、話していて楽しかった。


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あきゅろす。
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