修行02
ダイスに案内された場所は天の間。前にコウが倒れた時もここで数日休ませてもらった。
前もって用意していた様な速さで茶が運ばれる。ここの使用人達は皆一級の使用人だった。それこそどこかの王国に仕えていそうな気品ある者達。お茶を差し出され、コウ遠慮がちに受け取る。
「私にお願いとは?」
「あっあのですね、ちょっと場所を貸してはもらえないかと……」
「場所……ですか?」
突然の事にダイスは驚く。コウは昨日、思った以上に慌てたらしい。カルロの人型を見たというだけでなく、あの部屋がどれほど簡単に出入りできるか、それを知ってしまったのだ。
一人一人の部屋。だが鍵は職員が持っているし、入ろうと思えば誰でも入ってこれる。普通の人間ならそれでもいい。
ただコウにとってそれは危険なことだった。
「私、自分がどれだけ周りに影響を与えるかなんて考えたことなかったんです。でも知った以上危険なことはなるべく避けたい……私はこれから本試験に向けて本格的に修行するつもりです。ですから一般人と隔離された場所が欲しいんです」
「左様ですか……でしたら宮殿内を自由に使って頂いて構いませんよ」
ダイスにはどこかコウが追い詰められているような気がしてならなかった。
本試験まであと6日。セーレン・ハイルのみで戦うには危うすぎる。アムリアの力を自由に使えれるなら問題はないが……
「カルロやルーンに教わりながら、力を上手に使えるようにしようと思ってます。なるべく広い部屋がいいのですが……」
「はい。それならばこちらに」
コウの決意を感じたダイスは、本来のリュートニア家執事として接した。
大事に守るだけではない。上に立つ者としての度量や見解を身につける為にも、周りの人間が彼女を甘やかしてはならない。
アモン様はそれを判っていらっしゃるのだ。
昨日の夜、アモンとリセイの会話を聞いた。
彼らはまだ若い。だが信念を貫く心を持つ。そんな彼らが、いずれはコウの元に集い、守り慈しむのだろう。
ダイスはそんな未来を造る手助けをすることが、自分の使命であると感じていた。
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