第3話:01「修行」
精霊の王アムリア
それは世界の宝。
神の産物。
人の欲望。
無償の愛。
第3話 修行
「おはよう、カルロ」
今朝一番に目が覚めたのは、緑色の精霊であった。彼は隣に眠る少女をじっと見つめていたが、その視線を感じて、コウは少しだけ目を開けた。
目の前にちょこんと座る可愛らしい精霊を見つめながら、胸に抱くのは暖かな小鳥。一人じゃない。そう思える瞬間だった。
私は朝食を済ませると、着替えてすぐに部屋を出た。その後に続く二匹の精霊。誰も彼らの存在を知ることはない。たかが軍人には、そんな能力は無い。リセイやアモンが特別なだけで、本当はこんなふうに普通に人と生活することは無いのだ。
彼らがここに滞在する理由は一つしかない。
全ては、コウの為に……
「カルロ、今日こそ私頑張って力を制御してみせるわよ」
『意気込みは素晴らしいですが、いったい何処へ向かっているんです?』
行き先を知らないカルロ達は、先ほどからそのことが気になっていた。コウは不満そうな精霊達の方を振り返り、可愛く笑ってみせた。
「宮殿よ」
+++++
「これはコウ様、どうかなさいましたか?」
裏門の入り口で、執事ダイスがそう声をかけてきた。コウは振り返りにこりと笑って挨拶する。
数分前。
宮殿に入ろうとして職員に止められたコウは、ここが禁断であることをすっかり忘れていた。
どう足掻いても入れそうになかったので、正面からは諦めて前と同じ様に裏門を通った。
さすがにそこには職員もおらず、宮殿の使用人らしき人が庭掃除をしているだけだった。その人はコウに気付き、慌ててここから離れるようにと言ってきた。さすがにただの使用人が精霊の王など知るはずもなく、困り果てていた所、後ろから聞き覚えのある声で呼ばれたのだ。
「突然すみません。ダイスさんにお願いがあって……」
「そうでしたか! さぁこちらへお入りください」
そう誘われたコウは元気に返事をし、何の躊躇いもなく宮殿に入る。その様子を使用人は呆然と見つめていた。
その人も使用人としてかれこれ7年ほど宮殿の仕事をしているが、その間に一般人が入ってくることなど一度もなかった。いや、あってはならぬことだとされてきた。
では……今の少女は何者だったのだろうか……?
数日前に教皇や司祭が何人か出入りしていたが、彼女は明らかに普通の女の子だった。
困惑している使用人に気付いたダイスは、「私の大事な客人ですよ」と詳細を濁した。
次へ→
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!