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仲間09


ケインは話を続けた。

「闇の精霊ってのはな、別に悪を指すんじゃねえ。まぁ他よりも負の力に惹かれやすいってことぐらいだな」

特に人間には負の力が強い。だから彼らにとって人間は餌にもなり得るのだ。

「支配されているのは精霊じゃなくて……人間?」

ケインとリナの沈黙は疑問を確実なものにした。

「あくまで試験でしょう? 危険ではないの?」

「仕方ねぇよ。軍人になれば何度でも手にかけなきゃならねぇんだ。今のうちに慣らしとく方が良いだろうしな」

「そうだけど……」

コウの顔色が良くないと気づき、リナが背中を優しくさすった。

コウは「ありがとう」と笑ってみたが、どうも上手くいかない。

その点、リナはいつも相手を安心させる笑顔を持っていた。

彼女は自分なんて何の戦力にもならないと思っているみたいだけど、それは大きな間違いだ。

「もしかして黒の獣も闇族なの?」

「当然だ。闇族ってのは闇の精霊が力を吸って現物化したヤツの事で、そいつらの獣種の事を黒の獣って言うだけだ」

「そう……だったんだ」

コウは初めて訓練室を使用した時の事を思い出した。

あの時斬り捨てたのは確かに獣の腕だった。それは幻影などではないと思う。

それは事実なのに、ケインの話を聞いていると不可解なことばかりが頭を掠めていた。

以前サラは、二次試験では本物を相手にすることになると言っていた。

つまり訓練室で行われる一次試験の相手は本物ではなく幻影ということだ。

それが、ずっとひっかかっていた。

セーレン・ハイルを用いた自分ですら苦戦したあの獣達に、他の見習いの人たちが苦も無く倒せるだろうか、と。

彼らが相手にしていた獣達は幻影であり、コウが相手にしたあの獣は確かに本物だったとすれば、納得がいく。

この違いに気付くのに随分時間がかかってしまった。




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