仲間06 「本試験が『恐い』だってぇ? そんなん言ってるヤツがエントリーすんなよな」 「――っ」 ケインの言葉にリナは俯いてしまった。悔しそうに、唇をかみ締めて……。 確かに言い返せない事だろう。出来ないなら受けなければいい。 ――でも、そうじゃない。彼女は、リナは軍人になりたいんだ。恐くても、身がすくむ思いをしても、それでも試験に挑むのは、揺るぎない思いがあるからだろう。 私はそういうの、嫌いじゃないよ。 「うるさいわね、そんなのリナの勝手よ」 「同じチームの俺らが被害受けるんだぜ? たまったもんじゃねーよ」 「あなた、自分がどれほどの者だと思ってるの?」 コウのその言葉に、ケインはビクリと反応した。こいつ、もしかして…… 「あなたこそ、落ちたんじゃない?」 「っば!! 何言って――」 「そんな動揺しないでよ、あからさま過ぎるわ」 「――っ! ちっ……」 ケインは舌打ちしてそっぽを向いた。 ――当たってしまった。 冗談というか、ちょっと腹が立ったから言っただけなんだけど。やっぱり悪かったかな……。 本人にとってはとても悔しいことのはずだから。他人がどうこう言うことじゃないしね。 それに、 挫折を味わった人間は強い。私はそう思ってる。 一見『落ちこぼれ』と言われてしまいそうなメンバーだけど、そうじゃない。挫折しても、何度も挑戦しようとする意気込みは並みならぬものだ。考えようによっては、彼らは心強いのかもしれない。 「ごめん……私が言うことじゃなかったわ。今度の試験で一緒に戦う仲間だもの、仲良くしよう」 「そうですわ……ケインさん」 リナも賛同してくれた。 この子はおっとりさんだけど、人をよく見てると思う。このピリピリした空気の中、にこりと笑ってみせた彼女を尊敬する。 ←前へ|次へ→ [戻る] |