第1話:01「仲間」
第1話 仲間
非日常的なことが起こった後はちょっとした虚無感に陥る。私は今まさにその状態で、訓練なんてやる気が起きなかった。
初試験から数日後、いつも通り変わらない朝。体力も精神力もすっかり元通りだ。だが睡眠を貪る心地良さに慣れてしまったからか、もっと寝たいと思ってしまう。
そんな些細な私の幸せを知ってか知らないでか、彼女は私の部屋の前で叫び続けた。
「コウ!」
「……」
確かに呼ばれた気がしたが、とりあえず放置する。
「いるんでしょ!? 出てきなさいよっ」
「ぅるさいなぁ……」
寝起きのすこぶる悪いコウは、自室のドアを無造作に叩かれ不機嫌さが増していた。
覚束ない足取りでドアまで歩き、ポストの隙間から外の様子をそっと覗いた。
扉の前で腰に手を当てて仁王立つ金髪の少女。サラだ。
「コウ! 早く起きなさいよ!」
「……え、何で?」
呆けながらもドアを開ける。と同時にサラが勢い良く部屋に入り込んできた。
彼女は初めてここに来たときから何かと振り回され、いやいや世話になり、自然と仲良くなった。
金髪の美少女で、その気の強さが無ければ結構モテただろう。彼女の気迫に気圧されて近づけない男が多数。今日も容赦なく我が道を突き進む強気な彼女に、もしかしたらマゾっ気のある人は喜んでるかもしれない。
と、そんな紹介をしている場合ではなかった。今にも噴火しそうなサラ山を、なんとか抑えなければ。
「サラおはよう……いい天気だ」
「コウ! 昨日も一昨日もその前も、一体何処にいたのよ!」
最後の「ね」をいう前に、サラは一気に叫んだ。言い終わった後、ゼェハァと息をつく。
昨日も一昨日もその前も、とは、まさか毎日私の部屋に来ていたということか。
ああ、まずい。
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