9話 消せない過去
なんて愚かな女だ。そんな風に思っていた。だが本当に愚かだったのは……私だった。
アモンは彼女に『アムリア』であることを告知した。当然コウは自分が特殊だと知って思い上がるだろうと思っていた。
――でも、彼女は違った。『私はアムリアを名乗らない』と、言ったんだ。
それから私はコウという少女に興味を持った。もちろんアモンもそうだったが。少しずつ……コウという人間を知ることで、彼女への『信頼』が生まれていった。
彼女を知りたいと思うし、私を知って欲しいと思うようにもなった。
彼女に対する心の変化は、自分でも不思議なことだった。 自然と惹かれ……いつのまにか彼女に手助けしている自分がいた。
――ああ。私はなんて愚かだったのだろうか。彼女の表面のみを見て判断していた、私こそ詰まらぬ人間なのだ。
クリスはそんな罪悪感を持ち続けていた。
せめて、彼女を守ろう。そうすることで、少しでもこの心が救われるなら。そして、何度も私に見せてくれる、コウ様の優しい暖かな笑顔を……
いつまでも、守り続けよう。
そう、誓ったんだ。
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