9話 消せない過去
コウとリセイはしばらく話をしていた。訓練には慣れたか、とか精霊はどんなものか、とか。
初めはとっつき難い感じだったが、話すとそれほど硬い人ではないし、むしろ話題が豊富で柔軟だ。コウはどちらかと言うと人見知りをするほうだが、もう自然に話すほど彼に対して慣れていた。
私は初対面の人、無礼な人にはまったく笑顔を見せないが、好印象を持った人間には随分心を開く。フレアンは自分の恩人だし、話しやすいので、当然表情豊かになる。
そんな柔らかなコウを、リセイは愛らしく感じていた。
カチャ。
「コウ様! お目が覚めましたか!」
「あ……ダイスさん」
「はい、コウ様、お体の具合はどうでしょうか」
「あ! もうすっかり! すみませんでした……私……」
コウはそう言いかけ、俯く。ダイスはフレアンと顔を見合わせ少し動揺した。そんな中、コウはひたすら自分の過失を責めていた。
自分の力量を見誤った。これは私の過ち。判ってなかったわけじゃない。戦うごとに、何かか蝕まれていく感覚を……。ただ、気付かない振りをしてただけ。
役立たずでいたくなかったから……。
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