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9話 消せない過去
『大した事ではない。もう十年も療養していたんだ。当に力は戻っている』

「そんなわけないだろう。アムリアが不在の十年なんて精霊にとっては何の癒しにもならない。コウが現れてから漸く回復してきた所なんだろ」

『……しかしこのままでは』

「いいから、あまり先を急ぐな。我々も全面的に彼女を守る。だから今は……待ってくれ」

 リセイは必死でカルロを止める。もし、完全に回復しきってないままで自分にかけてある『力を制御する封印』を解いたら。それは一歩間違えれば精霊の破滅を導く。
 強大な力に弱った器(体)が耐え切れず、肉体ともども崩壊する。 うまく保たれる場合もあるが、そうでない事のほうが多い。何かしらの封印を解くということは、かなりの危険を伴う行為なのだ。

「コウの事は、確かにこのままでは危険だ」

『…………』

「帝国へ連れて行くのが一番安全だと思うが……」

 リセイはそこで言葉を止めた。コウの体が少し動いたように見えたからだ。カルロは素早くコウの傍まで近寄り、顔を覗き込む。

『コウ……?』

「……ん……」

 リセイも体を前へ寄せる。うっすらと開いたコウの瞼は非常に重たそうだった。その奥から覗く瞳は焦点が合っておらず、ぼやけている。
 だが、自分の周りに誰かがいる事に気付いたコウは、小さく声を発する。

「…………だれ?」



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あきゅろす。
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