騎士の集い14
思わず噴き出したアモンは、慌ててその口を塞ぐ。それをリセイが聞き逃すはずなが無い。
「何がおかしい」といった恐ろしい形相で、アモンを睨む。アモンは慌てて弁解した。
「いっいや、あのね……コウに謝っても無駄だと思うけど」
「どういう意味だ」
リセイの怪訝そうな表情に、アモンは命が縮まりそうだった。
「だからさ……どうせ謝ったって『何で?』とかって言うに決まってるんだから、深く考えない考えない。ねっ?」
「左様でございます。お二方、その様に気落ちされまするな」
アモンが宥めようとしているのが伝わったのか、場の空気は少し和らいだ。そして年長者であるダイスの言葉に、マリアとクリスも心を静めさせられる。
「ああ、そうだな、コウ様ならきっと……」
「そう、ですわね……。それより、早くコウ様を暖かい場所へお連れしなければ──」
女性達は今やるべき事を思い出し、普段通りに行動する。無言なリセイが少し恐かったが、アモンは「さぁさぁ!」とみんなを急かせた。
マリアは寝床や着替えを用意する為、先に宮殿に入っていった。クリスも一礼して彼女に続く。ダイスは皆と逆方向へ行き、裏門を閉めていた。
コウを抱えたリセイは、アモンの方を一度も見ない。視線を正面に向けたまま、静かに低い声を響かせた。
「笑ったのはその事じゃないだろう」
「あ、やっぱバレた? リセイには嘘つけないよな〜、見抜いちゃうから」
はははっと笑うアモンに、リセイは怒るではなく、つられて顔を緩ませた。
リセイは知っているのだ。この一見ふざけた男が、実は大変優れた洞察力を持っているという事を。そして、大抵の事はリセイが言葉にする前に判ってしまう。
今回もきっと、アモンは「こう言うつもりなんだろ」と笑って見抜いていた筈だ。それがこの男の特技であり、リセイが尊敬している部分でもあった。
昔馴染みの二人は、華を抱えて宮殿へ入っていく。その後姿を、ダイスが微笑みながら見ていたことを、二人は知らない。
第4話「騎士の集い」[完]
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