騎士の集い11
===宮殿 裏門===
「お帰りなさいませ、クリス嬢、コウ様」
漆黒の礼装に身をまとったダイスが、裏門の前に立っていた。私達を出迎えてくれた彼に会釈で返す。クリスは直に彼の方へ向かい、色々と報告をしていた。私はそれを遠目で見つめていた。
この宮殿は、まだ少し慣れない。そうやって眺めていると、宮殿の奥からカルロとマリアが出てきた。
カルロはいつものぎこちない走り方で、必死に走って来ている。マリアさんも、声はよく聞こえないが「ご無事でよかったです──!」みたいな事を言ってるんだろう。
元気よく走ってくるカルロとマリアに近づこうと、コウも足を踏み出した。──その時だった。
私の視界が、一瞬白くなった。何か、白くてもやもやしたものが、頭の中をぐるぐるかき回して。それは途端に目の奥を刺し、血の気が引いていくのが感じ取れた。
コウの様子がおかしい事に気付いた執事ダイスは、慌ててコウに駆け寄る。だが私は、その姿をあまり鮮明に映せなかった。
ダイスの異常な行動を不審に思ったクリスも、コウを見て驚いた声を発する。その声が聞こえたと同時に、私は体が宙に浮く感覚を覚えた。だが、意識が保たれたのも、ここまで──。
私は意識を放し、地面に倒れこんだ。
──ドサッ
「コウ様!」
ダイスの叫び声が宮殿に響いた。その声を聞き、カルロとマリアも血相を変えて走り寄る。
「コウ様! コウ様っ!」
ダイスは気を失って倒れたコウを抱きかかえる。その傍で、クリスも必死でコウを呼ぶが……コウが意識を取り戻す気配は無かった。
マリアは仰天し、オロオロとしている。そんな中カルロはコウの傍まで近寄り、鼓動や呼吸を確かめた。
『大丈夫、疲れて気を失っているだけだ』
そう冷静に判断するカルロは、まだどこか不安げな表情だった。その言葉にマリアはほっと息をつく……が、
「あなた、喋れますの?」
『────!』
「そうですね、今確かに」
マリアの指摘に、カルロは迂闊だった自分を責める。そして、ダイスも冷静に思い返していた。言葉を使えるとは珍しい、と。
だがクリスだけは、黙って様子をいた。
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