騎士の集い10
===ティレニア 正門===
「ナティア=ソル、我々と行動するのもここまでだ。自室へ戻りなさい」
ティレニアに入る少し手前で、クリスはナティアにそう言った。クリスとコウはダイス達の待つ宮殿へ向かうため、ナティアを連れいくことは出来ない。一般人の宮殿への立ち入りは硬く禁じられているのだ。
それは宮殿が……『精霊の王』を安全に保護するための建物だから。
ナティアは少し動揺している。私もクリスの言葉にズシリとしたものを感じた。
こんな精神状態で一人にしてもいいのだろうか。いくら彼女のしたことは許されない事だとしても……。
私は心配の目をクリスに向けた。クリスはコウを安心させるように微笑む。
「(クリスさんが笑った。ってことは、ちゃんとナティアのこと考えてくれてるんだ)」
私は当然のように、そんな事を思った。気付くと自分でも不思議に思った。自分はこれ程までクリスを信用しているんだ、ということを実感した。
すると、何だか少しだけ嬉しい気持ちになった。
「わかりました……」
ナティアは力なく応えた。クリスは黙って頷き、なにやら門の前に立っている検問官に合図した。するとその検問官は慌ててクリスに走り寄る。
「この子を頼む」
「はっ! かしこまりました!」
検問官はビシッと敬礼し、ナティアに声をかけた。ナティアは検問官に連れられ、ティレニア内に入っていく。
その様子を見届けた後、クリスが声をかけてきた。
「行きましょう、コウ様」
「……うん」
「ナティア=ソルの事なら心配には及びません。私の直属の部下にしっかりフォローするように言っておりますから」
「……やっぱり」
「はい?」
「なんでもないよ」と私は元気に笑ってみせた。そんなコウを見て、クリスは不思議そうに歩き出す。
私はにこにこ顔のまま、クリスの後を付いて行った。
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